「ピカソのディフェンスは評価すべきところ。だが…」5.2東京ドーム井上尚弥戦に向けてサウジで大苦戦した中谷潤人はその反省をどう生かすのか…「グー・チョキ・パー」論争への答えも
それでもヘルナンデス戦の苦戦で中谷は評価を落とした。
井上とのスーパーマッチに向けて「中谷ならモンスターに勝てるのではないか」という期待感は薄れた。
だが、逆にプレッシャーから解放されて中谷が持てる能力をすべて発揮できる環境が生まれたとも言える。判定勝負を想定してこの階級で12ラウンドを戦えたことも大きい。
「この試合を通じて成長するプレゼントをたくさんもらった。そこに対する喜び、向き合う時間が試合中にたくさんあった。それをどう成長につなげるかが、ひとつ大きい。いろんな期待の仕方がある。そこを僕なりに超えていきたい」
元王者クラスや関係者の多くはヘルナンデス戦の苦戦を「中谷は井上に歯が立たない」とは結論づけていない。
井上真吾トレーナーも「あの試合で中谷選手の評価を下すのは間違っていますよ。相手が変わると中谷選手のボクシングは変わります。ボクシングってそうじゃないですか」と気を引き締めた。
いわゆるボクシング特有の対戦相手との相性が勝敗を大きく左右するグー・チョキ・パーのじゃんけん論争だ。
中谷にその意見に対する見解を求めた。
「(井上は)グー・チョキ・パーのすべてを出せる選手なんで、僕も、グー・チョキ・パーのすべてを出せる状況にしておかなければならない。試合中でも、チョキを出していたが、パーを出すとかの切り替えをやってその質をより鋭いものにしなければならない。その練習はしっかりと積み上げていく」
サウスポーで長身の中谷の武器はその距離だ。
井上との戦いでは、どちらが自分の距離で戦えるかという究極の“駆け引き”が勝敗を分ける。そこで上回るためには、井上が持つ豊富な引き出しに対応できるだけの引き出しを増やし、試合中の適応力が重要になってくる。
サウジでの井上とアラン・ピカソ(メキシコ)の試合は、ヘルナンデス戦の後に控室のモニターで見た。試合後の会見で感想を聞かれ「タイミングをとったり、合わせてくるパンチは鋭いなと感じながら見ていた。ピカソ選手は凄く勇敢に戦っていたという印象を持っている」とコメントしていた。改めて、井上がKO決着できなかった理由をどう分析していたかについて尋ねた。
「ピカソのディフェンス力も評価するべきところ。ピカソが、ずっとディフェンスを中心に戦っていたことがひとつある」
ピカソは、ガードを高くあげて、ディフェンス一辺倒のスタイルを貫き、11ラウンドまで、ほぼ打ち合いに応じなかった。井上はそういう相手でもバンタム級時代は倒してきたが、スーパーバンタム級になると、綿密に布石を打ちながらダメージを与えなければ簡単にはいかない。しかも、試合前にバンテージにいちゃもんを付けられ巻き直すなどの外的要因も重なり、井上は強引なボクシングをしてしまっていた。

