なぜ阪神の“ミスター無失点”渡辺雄大は戦力外から30歳にして感動のプロ初勝利を手にできたのか…母が新潟で続ける“恩返し応援”
阪神の渡辺雄大(30)が4月30日、東京ドームで行われた巨人戦でプロ初勝利を挙げた。2-2の6回に中継ぎ登板した渡辺は、先頭の代打・廣岡大志にヒットを許すが、自らの好フィールディングもあって後続を断ち、7回の勝ち越し劇につなげてウイニングボールを手にした。チームは破竹の5連勝。ここまで防御率0.00の無失点左腕は、昨年オフにソフトバンクから戦力外通告を受け、拾われた阪神で育成契約から這い上がってきた努力の人。ヒーローインタビューで両軍ファンに感動を与えた渡辺の姿は、出身母体でもあるBCリーグからNPB入りを目指す選手達の希望の星となっている。
“ミスター無失点”が5連勝を引き寄せる6回の力投
どん底から這い上がってきた“戦力外の男”が5連勝への流れを引き寄せる。 2-2で迎えた6回。
左腕の渡辺が、ウィルカーソンの後を受けた2番手として7番の香月、8番の大城と左打者が続く下位打線で起用された。原監督は、香月に代えて廣岡を打席に送り、渡辺は、三遊間を破るヒットを打たれた。
だが、続く大城の投手前に転がったバントを躊躇することなく二塁へ送球。廣岡を二塁で封殺した。ギリギリのタイミング。判断の難しい打球だった。 渡辺は好守で自らを助けると、続く代打の若林に対して読みの裏をかくストレートで空振りの三振。この日も2安打するなど好調の吉川のバットも徹底した外角へのスライダー攻めで空を切らせた。
「ウィルク(ウィルカーソン)も苦しい中で一生懸命投げていたし、いい流れをチームに呼べるように一生懸命投げました」
次の回、チームは、今村の5四球という大乱調にもつけこんで一気に6点を奪い勝負を決めた。
自らが呼び込んだ流れを「そのような形になったので良かった」と謙虚に振り返った渡辺がプロ5年目、30歳にして、ようやくプロ初勝利を手にすることになった。東京ドームでのヒーローインタビュー。渡辺に涙はなく「かなり遠回りしての初勝利ということで、とてもうれしく思うし誇りに思います」と堂々と胸を張った。
2017年に新潟アルビレックスBCから育成ドラフト6位でソフトバンクに入団。3年目に支配下登録されたが、肘の靭帯を痛めて戦列を離れた。昨年もスタートはリハビリに時間を取られ、復帰したものの1軍登板はわずか6試合にとどまりオフに戦力外となった。ファームの監督時代から渡辺に目をつけていた矢野監督が声をかけて阪神と育成契約。キャンプ、オープン戦と結果を残して再び支配下登録を勝ち取った。
「本当に遠回りしたので、たくさんの人に無理だと言われたときもあったけど、それでも応援してくれる人もたくさんいて、そういう応援と声が自分があきらめずに野球をやる原動力になったと思います」
言葉が染みる。
手にしたウイニングボールは「たくさん心配も迷惑もかけた」家族に贈りたいという。