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元K-1王者の武居由樹(右)の右ストレートが東洋太平洋王者の顔面を捉える(写真・山口裕朗)
元K-1王者の武居由樹(右)の右ストレートが東洋太平洋王者の顔面を捉える(写真・山口裕朗)

強さは本物!なぜ元K-1王者の武居由樹はボクシング転向5戦5KOで東洋王座を獲得できたのか…バンタム級での世界獲得プラン浮上

 ムエタイの世界からプロボクシングに転向して王者になったボクサーは枚挙にいとまがないが、日本ではK-1から転向してヘビー級で東洋太平洋、WBOアジアパシフィック、日本と3つのタイトルを獲得した藤本京太郎(現在はK-1復帰)に次ぐ2人目の快挙。

 キック時代は、6年前にKrush -53kg初代王座を獲得したのが初タイトルだが、そのときと比較して、「プレッシャーは感じた。キック時代の最初に(タイトルに)挑んだときは緊張していた。今回は、K-1王者としてもう一回ベルトを取らねばいけないという違う種類のプレッシャーだった」という。

 デビュー以来、ここまで4試合は、すべて2ラウンド以内のKO勝利。4分22秒以上を戦ったことがない武居に対して、一部のファンや関係者の間からは、大橋会長、曰く「長く(ラウンドを)戦ったことがない。ガードが低い」などという疑念の声が上がっていた。

 K-1は基本的に3ラウンド制。長丁場のボクシングでのスタミナ配分や、レベルが上がった時点でのディフェンス技術への不安要素である。

 実は、大橋会長には、そういう雑音とは違う不安があった。  前日に井上尚弥と八重樫トレーナーと食事した際、アポリナルとスパーリングで拳を何度も交えた経験のあるモンスターが「パンチが凄くありますよ」とポツリと漏らしたのだ。

 アポリナルは16勝(10KO)で2敗しかしていないフィリピンの難敵で、今年4月には和気慎吾や久我勇作を倒してきた“日本人キラー”の元WBOアジアパシフィック同級王者であるジョンリエル・ラモナル(フィリピン)を10回KOで下し、このベルトを獲得した。タフでパンチがあるため、過去に井上尚弥のパートナーとして日本に呼んだことがあったのである。

 世界の井上尚弥の警告が気になり大橋会長は、「ブルーになった」というが、武居は、そんな不安も、強いがゆえに聞こえてきた雑音さえも吹き飛ばすファイトを見せた。

 むしろボクシングの型にはまらず、「倒すことしか考えていない」という闘争本心が、表に出た荒々しさが、K-1出身の武居の個性として際立った。

 大橋会長も、「一発もパンチをもらっていないんじゃないか。スタミナ、試合の作り方もうまくできた。(最長で)4分ちょっとしかやっていないんだから、みんなに心配されるのも当たり前だが、パワードリーム(キック時代の所属ジム)での原始的なボクシングよりも凄い練習量、格闘キャリア、八重樫(トレーナーの指導による)の相乗効果で今日みたいな試合ができると確信していた」と評価した。

 しかし、武居がスーパースターへの階段に踏み出したことで悩ましい問題も浮上した。

「スーパーバンタム級が大変なことになってきた。尚弥さんも上げてくるからね」

 大橋会長が嘆く。

 

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