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鹿島アントラーズの新監督に岩政氏が就任して2週間。戦績は1勝1分け。何がどう変わったのか?(資料写真:YUTAKA/アフロスポーツ)
鹿島アントラーズの新監督に岩政氏が就任して2週間。戦績は1勝1分け。何がどう変わったのか?(資料写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

鹿島の岩政監督が川崎戦で就任後初黒星も「常勝軍団の看板を下ろしていい」と伝える異例ミーティングを行っていた真意とは?

 明治安田生命J1リーグ第27節の5試合が27日に行われ、鹿島アントラーズが1-2で川崎フロンターレに敗れ、岩政大樹監督(40)の就任から3試合目で初黒星を喫した。敵地・等々力陸上競技場に乗り込んだ鹿島は前半8分にPK、14分には直接FKで立て続けに失点。後半7分にFW仲間隼人(30)が1点を返し、その後も攻め込みながらゴールが遠かった。実は、試合前に岩政監督は、「常勝の看板を下ろしていい」と選手たちに伝えていたという。その真意とは?

「負けたのは僕の責任。それだけです」

 アウェイチームの監督から臨む試合後の公式会見。質疑応答に先駆けて司会進行役から求められる、終わったばかりの試合の総括を岩政監督はわずか6秒で終えた。

「選手たちは申し分のない90分をした。負けたのは僕の責任。それだけです」

 質疑応答ではキックオフ直前のミーティングにおける、知られざるやり取りを自ら明かした。開始早々に2点のビハインドを背負いながらも、連覇中の王者・川崎に敵地で最後まで食らいついた鹿島の選手たちの戦いぶりを問われた直後だった。

「試合前のミーティングで『常勝の看板を下ろしていい』と伝えました。これからチームを作っていくなかで、たくさんのミスも、たくさんの負けも出るだろう、と。そこは僕が引き受けるので、選手たちにはどんなスコアになっても、どんな状況になっても、相手にボールを回され続けても、とにかくいまやろうとしていることを続けようと求めました。それを90分間やってくれた点で、選手たちは本当に素晴らしかった」

 前人未到の3連覇を含めて、8度を数えるリーグ戦優勝はライバル勢の追随を許さない歴代最多。さらにYBCルヴァンカップ、天皇杯、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)を合わせたタイトル数を「20」に到達させている鹿島は、30年目を迎えたJリーグの歴史で「常勝軍団」と呼ばれるようになって久しい。  岩政監督自身も現役時代は、高さと強さを兼ね備えたセンターバックとして鹿島の最終ラインに君臨。3連覇を含めた7個のタイトル獲得に貢献している。

 受け継がれている歴史と伝統が凝縮されている、といっていい「常勝」の二文字と、古巣の指揮を執って3戦目を前にして決別を求めたのはなぜなのか。

 ひとつは川崎との相性の悪さがある。

 川崎にはリーグ戦で9勝8分け20敗と、すべてのクラブのなかで鹿島が唯一、負け越していた。特に2016シーズン以降は4分け9敗と未勝利が続き、コロナ禍で入国できなかったレネ・ヴァイラー前監督に代わり、岩政コーチが監督代行を務めた今年2月も、ホームの県立カシマサッカースタジアムで0-2と完敗を喫していた。

 キックオフ前の暫定順位も、3位の鹿島と4位の川崎の勝ち点差は1ポイント。もっとも、コロナ禍による順延が続いて消化試合数が3つも少ない川崎は、首位の横浜F・マリノスに詰め寄るチャンスも残していた。鹿島に続く3連覇を達成するためにも、ホームの大観衆を背に、勝利への執念をむき出しにして向かってくる。

 試合後の会見に登壇した仲間は、岩政監督の言葉をこう受け止めた。

「多分、選手たちを楽にするために言ってくれたと思っています」

 もうひとつはJ1における鹿島の立ち位置がある。

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