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オレゴン世界陸上の女子マラソンで9位まで追い上げた松田瑞生だったがハイペースについていけず「世界は強かった」と涙を流した(写真:西村尚己/アフロスポーツ)
オレゴン世界陸上の女子マラソンで9位まで追い上げた松田瑞生だったがハイペースについていけず「世界は強かった」と涙を流した(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

松田瑞生が9位健闘も入賞に届かず涙…オレゴン世陸で見えた日本男女マラソン界の新たな課題とは?

一方の17日に行われた男子はマラソン2度目の挑戦となる星岳(23、コニカミノルタ)と西山雄介(27、トヨタ自動車)が出場。

 5㎞15分43秒というゆったりペースで入ったが、トップ集団のペースは徐々に上がっていく。星が28㎞過ぎに集団から脱落すると、西山も30㎞過ぎで遅れ始めた。 気温20度以下の涼しいコンディションもあり、トップ集団の加速が止まらない。10000 m26分台のタミラト・トラ(エチオピア)が34㎞までの1㎞を2分43秒までペースアップ。ライバルたちを一気に引き離すと、大会記録を1分19秒も更新する2時間5分36秒を叩き出した。

 日本勢は西山が2時間8分35秒の13位、星は2時間13分44秒の38位。西山は世界陸上の日本人最高記録(2003年パリ大会/油谷繁)を50秒も更新した。キャリアを考えると大健闘といえるだろう。

 一方で西山は、「30㎞で動くのはある程度わかっていたので、集団前方で構えていたんですけど、それまでの小刻みなアップダウンとペース変動で脚を使ってしまった。世界の壁はまだまだ高いと感じました」と話した。

 日本勢は期待の高かった3人が欠場する〝非常事態〟のなかで、男女とも頑張ったといえるだろう。しかし、パリ五輪で「メダル」を狙うことを考えると、評価するわけにはいかない。   優勝者と日本勢のタイム差は男子の西山が2分59秒、女子の松田が5分38秒。何よりもトップ集団が〝本気の戦い〟に入る前に、日本勢はついていくことができなかった。残念ながら世界とはまったく勝負にならなかった。  ペース変化が頻繁にあったなかで、男女とも勝負どころでは10000mの日本記録を超えるようなスピードで突っ走った。それは国内大会とはまったく異なるレース展開になる。  では、日本勢が世界大会で勝負していくにはどうしたらいいのだろうか。

「ペースの上げ下げに対応するために短い距離から作ったり、こういうレースをたくさんこなしていかないといけない。海外のレースに出て経験を積むことが世界のトップ選手と戦うひとつのキーになるんじゃないかなと思います」と、TBS系でテレビ解説を務めた前日本記録保持者の大迫傑は指摘していた。

 大学卒業後は米国に拠点を移すなど、海外でキャリアを積み上げ、東京五輪の男子マラソンで6位に入った男の言葉には説得力があるだろう。

 女子マラソンの中継で解説を務めたシドニー五輪女子マラソン金メダリストの高橋尚子さんも、「日本のレースは一定ペースで進むことが多いですけど、世界で戦うにはペース変化の対応力が求められます」と話していた。

 加えて、「スタートは一緒と言われますが、好タイムを持っている選手は心に余裕があるんです。パリ五輪までに持ちタイムを上げて、引き出しをもっと増やせるように頑張ってほしいなと思います」と自己ベストの引き上げを課題に挙げた。

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