アルファタウリの角田裕毅も最終テストを終えて開幕準備を整えた(写真・Getty Images / Red Bull Content Pool)
アルファタウリの角田裕毅も最終テストを終えて開幕準備を整えた(写真・Getty Images / Red Bull Content Pool)

今日バーレーンGP開幕…勢力図の見えない今季のF1はどうなる?メルセデスの苦戦と角田裕毅の可能性

 ポーパシングとは、その上下に跳ねる様子が、海の上を飛び跳ねながら泳ぐポーパス(porpoise=ネズミイルカ)に似ていることから名付けられた現象だ。ダウンフォースは速度が高くなるとより多く発生し、車体が地面に押さえつけられるのだが、車高がある一定以上に下がると、マシン底面を流れる空気が遮断され、ダウンフォースを失う。その瞬間、車高が上がるが、その直後からダウンフォースが発生して、再び車高が下がる。ポーパシングとは、これを繰り返す現象だ。

 これを引き起こさないためには車高を上げることだが、それではコーナーを速く走ることができない。メルセデスが苦しんでいるのは、そのためだった。この現象は程度の違いこそあれ、メルセデス以外の全チームが抱えている問題で、このポーパシングをどのチームがいかに早く解決することができるかが、2022年の選手権の行方を占う重要なテーマとなるだろう。

 合同テストで多くのチームが苦しんでいたのは、エアロダイナミクスの変更だけではない。エアロダイナミクスと同時に、もうひとつ、大きなレギュレーション変更を2022年のF1が行ったからだ。それは18インチホイールの採用だ。

 F1は1990年代前半から昨年まで、13インチホイールが採用されてきたわけだから、一気に5インチもホイールが大型化された。ホイールは大型化されたが、タイヤの外径はほぼ同じ(2021年までは670mmで2022年からは690mm)なので、ホイールが大型化されたことでタイヤを横から見たとき、タイヤが薄くなったように見える。これがドライビングに大きな影響を及ぼすことになった。

 これまでのようにタイヤが分厚いと、ブレーキングやコーナーリング中にタイヤ自体が変形しやすくなり、ひとつのサスペンションの役割を果たしていた。いわゆる限界点が高かった。それが薄くなったことでタイヤが担う仕事量が減り、ブレーキングやコーナーリング中の限界点が低くなった。昨年のテストよりも今年のテストでのラップタイムが総じて遅くなった理由は、エアロダイナミクスの変更とともに、このホイールのインチアップが大きく関係している。

 開幕前の合同テストの順位は、この2つの変更にいかにスムーズに対応できたかどうかの差だということになる。しかし、エアロダイナミクスにしろ、18インチホイールの採用にしろ、導入されてまだ間もないため対応すべきエリアは多岐にわたる。したがって、勢力図は開幕後に大きく変更する可能性は十分考えられる。  日本人のF1ファンにとっては、2年目の角田裕毅(アルファタウリ)に期待するところが大きいだろうが、角田が2年目に活躍できるかどうかも、所属するアルファタウリがいかにポーパシングを抑え、18インチホイールに合わせたセッティングを施すことができるかにかかっている。その準備が整えば、角田が2022年に、昨年の自己最高位である4位を上回る活躍を見せても不思議はない。 (文責・尾張正博/モータージャーナリスト)

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