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今大会で存在感を示した三笘(右)だったが16強の壁を越えれず号泣(写真:森田直樹/アフロスポーツ)
今大会で存在感を示した三笘(右)だったが16強の壁を越えれず号泣(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

W杯16強の壁を破るのに何が足りなかったのか…三笘、吉田、鎌田、伊東らの涙と言葉から紐解く“答え”とは?「その先に行こうと考えると…」

 ドイツ戦は後半からシステムを、スペイン戦では同じく後半から戦い方を変えて同時に試合の流れも一変させた。要は相手に合わせたリアクションサッカーだったなかで、自分たちからアクションを起こすスタイルも身につける必要がある。より強い国になるための近道を、鎌田は「ビッグクラブでプレーする選手が、数人は必要だと思う」と持論を展開。さらにこう続けた。
「ビッグクラブでプレーしている選手は余裕が違うというか、ピッチの上に立っているだけで空気感が違う。言葉ではなかなか言い表せないようなものも感じさせる選手になっていけるように、自分はこれからの4年間を頑張っていきたい」
 攻撃の中心として期待された今大会の鎌田は、個人的には不本意な結果に終わった。クロアチア戦でも後半30分にDF酒井宏樹(32、浦和レッズ)との交代でベンチへ下がっている。4年後の次回W杯で捲土重来を期すからこそ、まずは個でレベルアップを果たすと誓った。
 グループステージで2ゴールをあげた堂安も、鎌田に思いをシンクロさせた。
「相手にボールを握られる時間が多くなると、勝つ確率はやはり下がると感じた」
 ドイツ戦の前半、そしてスペイン戦では試合を通してボールを握られ続けた。それでも勝てたのだからすごいじゃないか、と称賛される今後の状況を見越した上で、堂安は「僕からしたら正直、意味がない」と強気な素顔をのぞかせながら、クロアチア戦を振り返った。
「いくら強豪国に勝っても日本サッカーの歴史を塗り変えられなければ、すべてがゼロになるわけではないものの、負ければ周りからそういう慰めが入るだろうなと思っていた。絶対にそうはさせないという強い気持ちで、試合にも入ったんですけど」
 これまでの日本代表は、W杯が終わるごとに再編成されてきた。次の4年間における目標を問われた三笘は、涙で声を詰まらせながら「チームを勝たせる存在になる」と言い切った。
「代表でもそういう存在になっていかなきゃいけない。W杯で活躍して、チームをベスト8より先の世界に導ける存在がいい選手と呼ばれると思うので」
 森保ジャパンの出発点は、日本が長く武器としてきた組織力だけでは限界があると痛感させられた前回ロシア大会のベルギー戦だった。だからこそ、発足後は代表クラスの選手たちが以前に比べてさらに積極的に海外へ移籍。厳しい環境で各々が個のレベルを上げ、代表に招集されたときにはそれらを還元して、組織力のレベルそのものも上げる相乗効果を生み出してきた。
「監督もリスクを冒してコスタリカ戦でターンオーバーを使って、プラン通りにグループステージを突破して、この試合に余力を残して挑んだ。何が足りないのかがわかればすぐに修正しますよ」
 自らもキャプテンを拝命。その上で4年あまりに及んだ挑戦の集大成を持ってしても、ベスト8以降の世界へ通じる扉をこじ開けられなかった。4度目の挑戦でもはね返されたベスト16の壁とは何かと問われた吉田は、思わず苦笑いを浮かべながらこんな言葉を残している。
「日本サッカー全体でまた4年間、どうすれば越えられるのかを考える戦いが始まると思う」
 すでに鎌田や堂安、三笘らがテーマを定める次の4年間へ、吉田は「僕はそこには……ゆっくり考えます」と何かを言いかけて取材エリアを立ち去った。手が届きそうで、実はちょっとずつしか距離を縮められない。もどかしさを残して、日本のカタールW杯が終わりを告げた。
(文責・藤江直人/スポーツライター)

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