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青森山田高監督からJ2町田ゼルビア監督へ異例転身した黒田剛監督が2戦目で待望の初白星(写真・松尾/アフロスポーツ)
青森山田高監督からJ2町田ゼルビア監督へ異例転身した黒田剛監督が2戦目で待望の初白星(写真・松尾/アフロスポーツ)

青森山田スタイルがJ2で通用した理由とは…FC町田の黒田剛監督が2戦目で初白星「初勝利がいつ来るのかと寝られないときも」

 成果は前半38分に最高の形を伴って、ファン・サポーターを喜ばせた。
 群馬のペナルティーエリアの右側で獲得した直接FK。角度のない位置でボランチの下田北斗(31)が利き足の左足を振り抜く。弧を描きながらゴール中央に向かってくる、低くて速いボールに勢いをつけて飛び込んだのがDF池田樹雷人(じゅらと、26)だった。
「(下田)北斗さんがいいボールを上げてくれたので、僕は合わせるだけでした。そこは自分の持ち味でもあるので、自信とパワーを持って飛び込んだ感じですね」
 生まれたときに雷が鳴っていた、という理由で名前の一部に「雷」がつけられた池田は、メディアから「カミナリヘッドと呼んでいいですか」と問われて思わず表情を崩した。身長186cm体重82kgの巨躯を誇る屈強なセンターバックは、宙を舞いながら最後は後頭部のあたりにボールを当ててゴールネットを揺らし、新生ゼルビアの第1号ゴーラーになった。
 池田はJ2のブラウブリッツ秋田から、下田は同じく大分トリニータから、新たに発足した黒田体制に必要な戦力としてともに完全移籍で加入した。
「昨シーズンのJ2における空中戦での勝率が最高位に近い選手であり、黒田監督が求めるセットプレーからの得点力アップにも期待して獲得しました」
 今シーズンから町田のフットボールダイレクターを務め、編成面を司ってきた原靖氏は池田を獲得した理由をこう語り、さらに下田に対しても次のように言及した。
「近年のJ2ではセットプレーからの得点率がすごく高くなっている。その意味でリーグ屈指の精度と言える、左足のキックを持つ下田選手の獲得に至りました」
 新加入コンビが開通させたホットラインこそが、黒田監督が言及した町田の「優位性」となる。さらにジェフユナイテッド千葉から加入したチャン・ミンギュ(23)とセンターバックを組み、2試合続けて相手を零封する原動力にもなっている池田へ、指揮官はこんな言葉も紡いでいる。
「青森山田高じゃないですけど、球際で強さを発揮して、空中戦やリスタートにも強いセンターバックは、私がチームを作るにあたってどうしても欠かせませんでした。左利きでフィードもいい有能なセンターバックとして、信頼を置いて起用しています」
 試合を決定づける後半39分の追加点は、指揮官も驚く形で生まれた。
 相手ペナルティーエリアの左側で獲得した直接FK。すでに下田がベンチへ下がっていた状況で、ボールの背後にはボランチの高江麗央(24)と、ロングスロワー役を黒田監督から任されている左サイドバックで、町田に加入して2シーズン目の翁長聖(28)が立った。
 このとき、高江から“ある狙い”をささやかれたと翁長は言う。
「速いボールでファーを狙えばいけるんじゃないか、と」
 背中を押された翁長が右足を思い切り振り抜く。敵味方が入り乱れたゴール中央付近の上空を、弧を描きながら通過したボールは直後に急降下。リオ五輪代表の守護神を務めた櫛引政敏(30)が一歩も動けないなかで、ファーサイドのゴールネットに突き刺さった。
「落差がものすごかったですし、見ていたわれわれだけでなく、相手チームもちょっと驚くようなシュートだったんじゃないかと思います」

 

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