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レアル・マドリード戦でゴールを決めた久保建英( 写真:なかしまだいすけ/アフロ)
レアル・マドリード戦でゴールを決めた久保建英( 写真:なかしまだいすけ/アフロ)

「僕は来季も100%ソシエダの選手」なぜ久保建英はビッグクラブ移籍を封印してレアル・ソシエダ残留を決断したのか

  レアル・ソシエダに所属する日本代表MF久保建英(21)が、来シーズンもチームに残留すると明かした。自らのゴールで勝利した2日(日本時間3日)のレアル・マドリード戦後に「僕は来シーズンも100%、チュリウルディン(ソシエダの愛称)の選手です」と明言した。今シーズンの好調ぶりを受けてバルセロナ、アーセナル、そして古巣レアル・マドリードが獲得に興味を示していると報じられたなかで、なぜビッグクラブ移籍を自ら封印したのか。

 残留宣言の背景にあった伏線

 

 スペインサッカー界で注目を集めていたオフの去就に、自らの言葉でピリオドを打った。レアル・マドリードに2-0で快勝した余韻が残る試合後の記者会見。来シーズンへ向けた久保の発言を、マドリードに拠点を置く同国のスポーツ紙「MARCA」が伝えた。
「個人的にはラ・レアル(ソシエダの愛称)の人たちが、僕のことを必要としていないのでは、と心配していました。でも、いまはみんなが僕を必要としてくれている。この状況がとても幸せだし、僕は来シーズンも100%、チュリウルディンの選手です」
 唐突に映る久保の残留宣言には伏線があった。
 ソシエダで好調を維持する久保を獲得しようと、育成年代に久保が所属したバルセロナ、プレミアリーグのアーセナルが興味を示し、さらに古巣マドリードが復帰させる動きがあると報じられたなかで行われた直接対決。前日1日の公式会見で久保の件を問われたマドリードのイタリア人指揮官、カルロ・アンチェロッティ監督はこんな言葉を残していた。
「私たちは彼を見守っている。話し合うのは今後数カ月間となるが、彼のようなタイプの選手が私たちの陣容で出場時間を手にするのは非常に難しい」
 これにソシエダのイマノル・アルグアシル監督も、同じく公式会見で「彼は来シーズンも献身的にチュリウルディンでプレーする」と応戦した。綱引きに映る状況下で、後半2分に決めた先制ゴールで勝利に貢献した久保へもマドリードの件が問われた。
 久保は18歳になった直後の2019年6月に、J1のFC東京からマドリードへ加入。さらに昨年7月には、2027年6月末までの5年契約でソシエダへ完全移籍した。ヨーロッパを代表するビッグクラブとの契約を2年間残しながら、あえて袂を分かち合った。久保をソシエダ移籍へ駆りたてた理由は、マドリードで味わわされてきた苦い経験を抜きには語れない。
 久保はスペインでの最初のシーズンにマジョルカ、2シーズン目にビジャレアルとヘタフェ、3シーズン目には再びマジョルカへの期限付き移籍を繰り返した。ラ・リーガ1部勢での武者修行といえば聞こえはいいが、実際にはマドリードのEU圏外枠が常に埋まり、さらには久保の実力がまだマドリードのレベルには達していないと判断され続けたからだ。
 さらに久保自身も、いつしか「シーズンごとにプレー環境を変えるのが辛かった」という思いを抱くようになった。生き残れるかどうかの勝負と位置づけていた4シーズン目へ。腰をすえてプレーしたいと熱望したなかで、アルグアシル監督のもと、2019-20シーズンから6位、5位、6位と上位につけていたソシエダからオファーが届いた。迷う必要はなかった。
 指揮官が掲げる攻撃的なスタイルのもと、久保は2トップの一角や中盤の両サイドでレギュラーに定着する。たとえば先制点をあげ、さらに相手のオウンゴールも誘発した2月のエスパニョール戦後に行われた地元ラジオ局のインタビュー。聞き手から「ようやく居場所を見つけられたのか」と問われた久保は、充実感を漂わせながらこう語っている。
「いままでのところ、僕のベストシーズンだと言えるでしょう」
 もっとも、ソシエダへの思いが一方通行ならば意味をなさない。周囲から注がれる視線を、久保自身はどのように感じているのか。クラブの公式ツイッター日本語版(@RealSociedad_JP)がマドリード戦後に投稿した久保の動画に、注目すべき発言があった。

 

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