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5ゴールをあげた宮澤ひなたが大会得点王に輝いた(写真・ロイター/アフロ)
5ゴールをあげた宮澤ひなたが大会得点王に輝いた(写真・ロイター/アフロ)

なぜボール支配率21%のなでしこが強豪スペインを4-0で撃破できたのか…機能した組織的守備と1位突破で見えた「優勝の可能性」

 サッカーの女子W杯グループC最終節が31日、ニュージーランドのウェリントン・リージョナル・スタジアムで行われ、FIFAランキングで11位のなでしこジャパンが4-0で同6位のスペイン代表に圧勝。3連勝でグループCの1位突破を決めた。スペインとともにベスト16進出を決めていたなでしこは、過去1分け3敗と未勝利の強敵にボール支配率は21%に留まったが、組織的な守備でチャンスを作らせず一撃必殺のカウンター攻撃からゴールを量産した。5日の決勝トーナメント1回戦では、優勝経験のある古豪ノルウェー代表と対戦する。

 「女子W杯(2011年以降)で勝利チームが記録した最も低いポゼッション率」

 

 スタッツだけを見れば、どちらが勝ったのかわからない。
 国際サッカー連盟(FIFA)の公式HPに掲載された公式記録。そこには女子W杯史上に残る稀有な数字が刻まれていた。
 90分間におけるパスの総数は、なでしこの265本に対してスペインが925本。そのうち成功数はなでしこの174本に対して、スペインは5倍近い834本に及んだ。
 何よりも中立(インコンテスト)の時間帯を除いたボール支配率は、日本の21%に対してスペインは68%と大差がついていた。データ分析会社Optaの日本語版公式ツイッター(@Optajiro)は、なでしこがマークした数字を次のように伝えている。
「女子W杯(2011年以降)で、勝利チームが記録した最も低いポゼッション率」
 数字上では圧倒的に支配されながら、終わってみれば勝者はなでしこだった。しかも大量4ゴールを奪っての圧勝。0-1で敗れた昨年11月の国際親善試合を含めて、過去の対戦成績が1分け3敗。キックオフ前の時点でともに連勝で決勝トーナメント進出を決め、得失点差で上回られていたスペインからあげた初勝利とともにグループCの1位突破を決めた。
 何が両チームの明暗を分けたのか。日本女子代表の初代専任監督を務めたサッカー解説者の鈴木良平氏(74)は、日本の戦い方を「完璧でした」と称賛した。
「どちらが強い、弱いというよりも、両国のプレースタイルを考えたときになでしこがボール支配率でスペインを上回るのは難しい試合だった。それを前提とした戦略であり戦術のなかで相手に決定的なチャンスを作らせず、マイボールになったときにカウンターを中心にチャンスを作る。ある意味で相手にボールを持たせたという言い方もできる」
 試合を通して「肉を切らせて骨を断つ」ということわざが真っ先に思い出される。しかし、「捨て身で敵に勝つ」という意味を踏まえればちょっと違ってくる。正確にはスペインを「手のひらの上で転がした」となるだろうか。鈴木氏が続ける。
「守備時は3枚の最終ラインと左右のウイングバックの5人が、しっかりと選手間の距離を取りながらラインをコントロールしてすべてのスペースを消す。その前方ではダブルボランチが相手の縦への攻撃のスピードを落とさせ、あるいは外へ展開させて中央を絶対に守る。こうした守備が90分を通してできていたので、流れのなかではスペインがボールキープする時間が長かったにもかかわらず、最終ラインを突破されるような攻撃をほとんどさせなかった」

 

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