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朝倉未来はヴガール・ケラモフのタックルを封じきれなかった(写真・RIZIN FF)
朝倉未来はヴガール・ケラモフのタックルを封じきれなかった(写真・RIZIN FF)

わずか2分41秒の惨劇…なぜ朝倉未来はRIZINタイトル戦でケラモフの必殺チョークにタップしたのか…引退説が流れるも公式SNSで「多分まだ頑張る」と再起を示唆

 フィジカルとパワーに圧倒的な差があった。
 クレベルに負けた際にも指摘された朝倉の抱える問題点。その試合の前後から本格的なフィジカルトレーニングに取り組み始めていたが、ユーチューブ、ブレイキングダウンの主催者としての仕事、企業とのタイアップ案件、数々の事業の立ち上げなど、分単位のスケジュールに格闘家としての時間を奪われ、計画通りに肉体を改造することもままならなかったのかもしれない。リベンジ戦で、斎藤裕を下し、この4月にはフルマークで牛久絢太郎を振り切るなど、元RIZIN王者との実力差は示して、日本人相手では敵無しとなっていたが、まだ“内弁慶”。世界の強豪が相手となると通用しない。
 ケラモフは、約4年半にわたり11連勝をマークし、2021年の斎藤裕とのノンタイトル戦は、反則減点があり、1-2判定で敗れたが、内容では負けていなかった。
 堀口恭司は、「寝かされたら何もできないんじゃないかなと思う」と朝倉の弱点を指摘していたが、その苦手な展開に引き込まれたのも、パワー不足が原因だろう。ケラモフは、「打撃でも負ける気はしなかった」とも語ったが、朝倉は武器である打撃を消されてしまっていた。

 加えてハングリーさとモチベーションも違っていた。
 11月4日にRIZIN初の海外遠征となるRIZINのアゼルバイジャン大会が国家事業として開催されることも決まり、この日は、アゼルバイジャンから国会副議長も来日。
「とても大きなモチベーションになった」とケラモフは言う。同郷のトフィック・ムサエフが、第4試合でアキラを撃破していたことも励みになった。
 アゼルバイジャンの田舎で生まれ育ったケラモフは、「金持ちではなかった。外で遊ぶしかなく、毎日のように格闘技の真似っこみたいな喧嘩をしていた」という。そこで両親に「ちゃんとした格闘技をした方がいいんじゃないか」と、柔道や、ウーシュ散打、コンバットサンボなどを習う格闘技のクラブに入団させてもらったそうだ。
「楽な試合にならないと思っていた。ミスをすれば、逃すことなく攻めてくる相手。だから普通よりも、2倍、3倍と準備をしてきた」
 榊原CEOは「タイトル戦にしたこともそう。いろんなものを背負わせ過ぎたかも」と、RIZINの看板を背負うプレッシャーを朝倉の敗因のひとつに挙げた。
 ファンの関心は、朝倉の“今後”だ。
 当初、朝倉は、6月24日のRIZIN.43で体重超過でタイトルを剥奪されたクレベル・コイケとのリベンジマッチを目標にしていた。だが、「そんなことを言っている場合じゃないんで。考えていない」と、再戦の資格がなくなったと自虐気味に話した。
 次に向けて「何も目標はない。今は今後のことを考えられない状況」とも語ったことから、SNS上ではファンが引退を危惧。引退説まで流れた。
 だが、試合後にインスタを更新した朝倉は、「弱すぎた。いま自分がすごくちっぽけに感じる。今は頭が整理できてないけど、多分まだ頑張ります」と投稿し、再起を示唆した。榊原CEOも、「次なる一手はどうなるか。このままでは終わらない。みんなが背中を押す」とエールを送る。
 ケラモフが新王者となったフェザー級には、前王者のクレベルがいて、この日、Belltorの元2階級制覇王者のパトリシオ・ピットブル(米国)を右のパンチでTKOする“ジャイアントキリング”を演じた鈴木千裕(クロスポイント吉祥寺)が急浮上してくるなど、群雄割拠の階級となっている。ケラモフとのダイレクトリマッチの可能性は低いのかもしれないが、朝倉が超えなければならないファイターはまだ残っている。すべてを手にしているかのように見える人気ユーチューバー格闘家が、まだ見ていない風景と、戦う理由はあるのだ。

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