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5ゴールをあげた宮澤ひなたが大会得点王に輝いた(写真・ロイター/アフロ)
5ゴールをあげた宮澤ひなたが大会得点王に輝いた(写真・ロイター/アフロ)

女子W杯で初優勝のスペインに黒星をつけた“なでしこジャパン”の「実力世界一説」を検証してみた

 スペインは2015年カナダ大会で女子W杯初出場を果たすもグループリーグで敗退。前回の2019年のフランス大会ではベスト16で優勝したアメリカに敗れた。過去の成績を大きく上回り、一気に頂点へ駆け上がった今大会は全勝優勝ではない。グループリーグで黒星を喫している。
 それがなでしこだった。ともに決勝トーナメント進出を決めていた状況で迎えた7月31日のグループリーグ最終戦でスペインはなでしこに0-4のスコアで惨敗した。ボール支配率で68%対21%、パス成功数で834対174となでしこを圧倒。試合を完全に支配しながら決定機を作れず、逆にカウンターから立て続けにゴールを陥れられた。
 なでしこにとって、それまでの対戦成績が1分け3敗だった難敵から奪った初白星でもあった。
 勝負の世界に三段論法は通用しないが、SNS上では、「スペインに勝ったなでしこが実力世界一」というような声が飛び交った。準々決勝でスウェーデンに敗れたなでしこに世界一になれる実力があったということなのか。
前出の鈴木氏は「グループリーグにおけるなでしこの圧勝は、一概には評価できないかもしれない」と指摘する。
「お互いに勝ち抜けが決まっていた状況でのグループリーグ最終戦で、決勝トーナメントで予想される組み合わせを考えたスペインが、首位通過よりも2位通過の方がいいと判断した可能性がある。実際、決勝戦を戦ったスペインは、なでしこと戦ったときと大きく違っていた。グループリーグで対戦したスペインは、本物ではなかったと考えた方がいい。技術、戦術、イングランドを圧倒したスペインと比較すれば、なでしこよりも強いと言わざるをえない」
 ただ決勝を戦った両チームと比べて、技術と戦術の両面では「なでしこが決して引けを取らないレベルにある」と鈴木氏は言う。今大会のなでしこはボール保持型と非保持型の戦い方を対戦相手によって、さらに同じ相手でも時間帯や状況に応じて巧みに使い分けた。東京五輪後に就任した池田太監督(52)のもと、さまざまな戦術が浸透してきた証と言っていい。
 ならば、現時点におけるスペインとの差はどこにあるのか。鈴木氏は技術と戦術に続く要素、フィジカルの強さをあげた上で今後へ向けてこう提言した。
「身長の高さや体の大きさといった、ただ単に持って生まれた問題ではなく、要は体幹を鍛えなければいけない。なでしこが持つ技術面と戦術面のよさを発揮するためには、ボールを持ったときに相手に当たられても潰されない強さが必要になる。フィジカル面で後塵を拝し、技術面と戦術面でも長所を出せないまま負けたのがスウェーデン戦だった。世界のトップレベルの国に体幹の強さの部分で負けたら、話にならないことが証明された大会でもある」

 

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