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5ゴールをあげた宮澤ひなたが大会得点王に輝いた(写真・ロイター/アフロ)
5ゴールをあげた宮澤ひなたが大会得点王に輝いた(写真・ロイター/アフロ)

女子W杯で初優勝のスペインに黒星をつけた“なでしこジャパン”の「実力世界一説」を検証してみた

 サッカーの女子W杯決勝が20日、シドニーのスタジアム・オーストラリアで行われ、FIFAランキング6位のスペインが1-0で同4位のイングランドを下して初優勝した。ともに初戴冠をかけた大一番は前半29分、DFオルガ・カルモナ(23、レアル・マドリード)のゴールでスペインが先制。イングランドにほとんど決定機を作らせない展開で快勝した。そのスペインにグループリーグで4-0のスコアで圧勝したのが、なでしこジャパンだ。5ゴールをあげたMF宮澤ひなた(23、マイナビ仙台)が大会得点王を獲得。なでしこに世界一の実力があったということなのか。

 女子サッカー界の流れが変化してきた

 

 後半のアディショナルタイムは14分台に入っていた。同点への祈りが込められたイングランドの左コーナーキックをスペインの守護神カタリナ・コル(22、スペイン)がキャッチ。ボールを大事に抱えたまま、着地後にうつ伏せになった直後に歴史を変える主審の笛が鳴り響いた。
 7万5794人もの大観衆がスタジアム・オーストラリアを埋めた決勝戦のフィナーレ。9回目を迎えた女子W杯でアメリカ、ノルウェー、ドイツ、日本に次ぐ5番目の優勝国が誕生した。
 ともに初優勝をかけた大一番はスペインが中立時間帯を除いたボール支配率で47%対37%、パス成功数で413対281、そしてシュート数で14対7とイングランドを圧倒。最少スコアながら、決定機をほとんど作らせない試合内容で快勝した。
 日本女子代表の初代専任監督を務めたサッカー解説者の鈴木良平氏(74)は、オーストラリアとニュージーランドで共催された今大会で、出場3度目のスペインが手にした栄冠を「女子サッカー界の流れが変わってきた証」と分析した。
「歴史がまだ浅い女子サッカーで、体力だけで勝てる時代は完全に終わった。技術と戦術の両方を兼ね備えるだけでなく、それらのレベルが高くないと勝てない時代に入った。そのなかでもスペインはしっかりとした技術と戦術に加えて、体格で上回られるイングランドを相手にフィジカルでも負けていなかった。相手ゴールを速く目指す部分でもイングランドを上回ったスペインのストロングポイントは、細かいパス回しだけではなかったということ」
 技術と戦術、そしてフィジカルの強さが融合され、完璧なハーモニーを奏でた象徴的な場面が、両チームともに無得点の均衡が破れた前半29分だった。
 ドリブルでボールを持ち運ぶイングランドの選手を、センターサークル内で複数のスペイン選手が取り囲む。すかさずボールを奪うと、MFテレサ・アベレイラ(22、レアル・マドリード)が左サイドへ大きく展開。FWマリオナ・カルデンティ(27、バルセロナ)がボールをキープしているその外側を、左サイドバックのカルモナが追い抜いていく。
 パスを受けたカルモナは、そのままペナルティーエリア内へ侵入。角度のない位置から利き足の左足を迷わず振り抜き、強烈な一撃をゴールの右隅、ここしかないコースへ突き刺した。高い位置で相手ボールを素早く奪取してから、先制点が生まれるまでわずか10秒。鈴木氏は「スペインの狙い通りの形だった」と指摘した上でこう続けた。
「左サイドに大きく展開された30mほどのパス。ああいうのを平然と蹴ってくる。シュートにしても20mを超える距離からでも、チャンスと見れば迷わずに打ってくる。これらはなでしこジャパンにも必要な要素で、そのためにはパワーが必要になる」

 

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