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JFLの鈴鹿ポイントゲッターズのFW三浦知良が国立競技場で行われたクリアソン新宿戦の後半31分から途中出場もシュートはゼロ(写真:森田直樹/アフロスポーツ)
JFLの鈴鹿ポイントゲッターズのFW三浦知良が国立競技場で行われたクリアソン新宿戦の後半31分から途中出場もシュートはゼロ(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

“キングカズ”は11年ぶりに凱旋した“聖地”国立で何を思ったか…「皆さんが僕にゴールを期待しているのはわかるが…」

  日本フットボールリーグ(JFL)の鈴鹿ポイントゲッターズに所属するFW三浦知良(55、カズ)が9日に国立競技場で行われたクリアソン新宿戦の後半31分から途中出場。JFL歴代最多の1万6218人のファンが見つめるなかで、約11年ぶりとなる「聖地」への凱旋を果たした。1-0で逃げ切った鈴鹿が5試合ぶりの白星をあげた一方で、7試合続けてシュート数が「0」に終わった“キング”はその胸中に何を思ったのか。

 「ゴールだけを狙って守りに穴を生じさせる自分勝手なプレーは絶対にできない」

 

 5分が表示された後半アディショナルタイムの最後に、鈴鹿からゴールの匂いが漂ってきた。発信源はピッチの中央を勢いよく駆け上がっていた背番号「11」だった。
 自陣の真ん中で味方からの縦パスを受けたカズの視界には、右サイドにFW三宅海人、左サイドにはキャプテンのMF中村健人と、ともにフリーの味方がはっきりと映っていた。
 すかさず三宅へボールをはたき、自らは相手ゴール前へ。三宅が中村へのサイドチェンジを通す間にさらに加速。中村が相手ゴール前へ折り返せば――という場面がわずか数秒でできあがった。
 しかし、中村のクロスは新宿の2人がかりの守備に食い止められた。フリーで走り込んでいたカズは思わず天を仰いだが、表情には笑みを浮かべていた。
「ボールが通ってフィニッシュで終われれば最高でしたけど、まあ次ということで」
 試合後の取材エリアに上下黒のスーツで、ワイシャツもネクタイも黒色系でそろえて姿を現したカズは、移籍後初ゴールになりかけた場面を振り返りながらこう続けた。
「理想的なカウンターでしたね。あの形を3人で作れて、相手ゴール前までいけたのは収穫。あれがパターンとしてできるようになれば、チームとして成長できるんじゃないかな」
 JFL史上で14年ぶり2度目、改修されてからは初めて開催される国立競技場でのリーグ戦。スタンドには2008年11月の栃木SC-刈谷FCで記録された1万3821人を大幅に上回る、歴代最多の1万6218人のファンが駆けつけた。
 そのスタンドから敵味方の垣根を越えて、大きな拍手が起こったのは後半28分すぎ。アップを重ねていたカズが呼ばれ、3分後にはMF日根野達海との交代でピッチに立った。
 日本代表やヴェルディ川崎(現東京ヴェルディ)のエースとして、数え切れないほどの記録や記憶を刻み込んできたカズが「聖地」でプレーするのは、横浜FC時代の2011年10月2日のコンサドーレ札幌戦以来、実に4025日ぶりだった。
 改修後ではもちろん初めてだが、真っ先にカズの脳裏に浮かんだのは懐かしさではなかった。試合そのものは後半17分に鈴鹿が先制点を決めていた。実兄の三浦泰年監督から託された使命は「試合を締める」だったからだ。
「みなさんが僕にゴールを期待しているのはわかりますけど、あの展開でゴールだけを狙って守りに穴を生じさせるような、自分勝手なプレーは絶対にできない。みんなを助けるために一番後ろに戻るときもあるだろうし、サイドに出なきゃいけないときもある。失点だけはしないように賢く戦っていくなかで、チャンスがあれば前へいって攻撃の形も作ろうと。その意味では自分のなかでは割り切って、ゴールよりも勝利と思ってプレーしていました」

 

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