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那須川天心が転向2戦目でメキシコ国内王者から2度のダウンを奪い、パーフェクト判定で勝つも2試合連続でKO決着とはならず(写真・山口裕朗)
那須川天心が転向2戦目でメキシコ国内王者から2度のダウンを奪い、パーフェクト判定で勝つも2試合連続でKO決着とはならず(写真・山口裕朗)

「人生はうまくいかないもの」なぜ那須川天心は転向2戦目もKO決着できなかったのか…メキシコ国内王者相手に2度ダウンを奪いパーフェクト判定勝利…本田会長は熟成育成プランを明かす

 7ラウンドには、急所は外れていたが、右フックが勢いよく当たったため、グスマンは、なぎ倒されるようにしてダウンした。ダウン判定がスリップダウンに変更。インターバル中に再びダウンに変更されるという、なんともお粗末なアナウンスもあったが、結局、天心が奪ったダウンは、1ラウンドと、7ラウンドの2つだけ。タフなメキシカンの息の根を止めるまでには至らなかった。
 なぜ天心は2試合続けてKO決着ができなかったのか。
 本人の分析はこうだ。
「前回に比べて、どっしりと構えたり、自分の思った動きはできるようになってきた。でも1ラウンドにカウンター(でダウン)を取って、相手が何もしてこないときに、どうしようかと迷った。僕は打って、打って、相手が出てくるのに合わせるスタイル。練習してきたそのスタイルだけになったのがKOできなかった原因。試合中もわかった。次に向けての課題。まだまだ強くなっていきたい」
 グスマンの強固なガードを崩すための“引き出し”が足りなかったという。
 4ラウンドに「痛かった。今は握れない」ほど左拳を痛めたこともKO決着ができなかった理由のひとつだろう。キック時代にも天心は拳の故障には悩まされたことがある。
「それ(ケガ)も含めて試合。左が打てないなら、右を打っていろんなパターンができるように。前向きな次の課題です」
 明確な宿題が残ったことは、まだ転向2戦目の天心にとってプラス材料だ。
 本田会長は、こう見た。
「相手がタフで頑丈。ガードもしっかりしている。普通なら、あの(6回の)ボディで倒れてもらわないと困るが、腹も凄く鍛えてあった。天心はキックでは打ち合いをしたことがない。人一番反応するから、相手のパンチを外して、外して打ちにいく。だから相手が下がらない。内側でプレッシャーをかけてブロックして打ち合えれば倒せたんだけどね。そこが課題」
 筆者もグスマンを下がらせる機会が少なかったことが気になっていた。
 本田会長が指摘した「打ち合い」とは、つまり前重心でパンチに体重を乗せること。「外す」というディフェンスに意識がいきすぎると、必然、パンチは軽くなる。
 前回の試合後に映像を確認して、粟生トレーナーと共に「絞って打つ」ことと、グローブの中で拳を握るタイミングも変えて、いわゆるナックルを返してインパクトの瞬間の威力を増すKOパンチに取り組んできた。本来のスピードがのったパンチは、横に置いて、主に、その“KOパンチ”に比重を置いて100ラウンドを超えるスパーリングを重ねて手ごたえもあった。
 確かにデビュー戦に比べて重心が下がり、ステップインも力強くなり、打ち込むスタイルへの変貌は見てとれた。パンチをもらわない距離感はさらに磨きがかかり、ジャブ、ワンツーの基本に加えてコンビネーションブローも多彩になった。だが、まだ理想のパンチを急所にヒットさせる確率は低く、決定的なダメージブローはなかった。
 対戦相手が新型コロナの感染により9戦9勝の超好戦的なホープのフアン・フローレス(メキシコ)から、堅実にパワーで押してくるスタイルのグスマンに変更になったこともKO決着できなかったことに影響した。
「フローレスの方が危険だけどガードもしないし粗さがあるので倒す可能性もあった。だが、グスマンはガードが固くて利口。(KO決着できない)怖さはあった」と本田会長。それでも転向わずか2戦目でメキシコ国内王者を圧倒し、8ラウンドを経験し、次への課題が明確になったことの意義は大きい。
「内容的には苦戦ではなかった。圧倒できた。お客さんがいる以上、KOしてスカッと勝ちたかったが、“うわあやってしまったなあ”ではなく、次の目標が明確に見えて、“ボクシングは面白いな”というか、もっと強くなれる機会を得たと思う。8ラウンドやってスタミナは切れなかった」
 そう天心も言う。

 

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