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辰吉寿以輝が11月15日に両国で天心のデビュー戦相手を務めた与那覇と対戦(写真・山口裕朗)
辰吉寿以輝が11月15日に両国で天心のデビュー戦相手を務めた与那覇と対戦(写真・山口裕朗)

辰吉丈一郎が「天心にKOされなかった男」と11.15両国で対戦する寿以輝に“親心エール”「気負うのは危険。判定勝利でも技術を見せれば“おお!”と言わせることはできるんよ」

 偉大なる父の丈一郎にも試合決定を報告した。返ってきたのはただ一言。
「大きい会場でよかったやん」
 53歳にして、いまなお「現役」を貫いている父は、週に数度、古巣の大阪帝拳で練習するようになっている。寿以輝と時間帯が合うときがあれば、合わないときもある。
「週に一度は顔を合わせるけど、ほとんど親子でボクシングの話はしない」と寿以輝が言う。
 だが、やはり伝説の人は息子のことが気になる。
「(会見は)どうやった?」
 会見での寿以輝の発言を大まかに伝えると、「ようするに喧嘩を売ったわけやな」と、どこか嬉しそうだった。
――“大きな会場でよかったやん”とだけ言ったそうやね。他に伝えることはなかったの?
「大きい会場はモチベーションあがるやん。それ以上、なんも言うことないよ。好きなようにやったらええねん。まだ寿以輝は完成されてないもん」
 天心と与那覇の試合は映像で見たそうだが、「どんな試合やったかあ、あやふやにしか覚えていない」と、本気か冗談か、煙に巻いた。
 ただ、今回の試合結果と内容が同じスーパーバンタム級で戦う天心と比較されることは間違いない。
 父も「周囲は、そこで盛り上がるかもしれんね。アピールする分には寿以輝にとって願ってもないチャンス。周りが、お膳立てしてくれた、この舞台を生かすも殺すも寿以輝次第。当の本人が結果を出さんとあかん」と、この試合の意義を重要視している。
 リングサイドで見守った8月の再起戦後には、「ブランクを考えると合格点」とだけ言い、いつもの“小言”は封印していた。
「言いたいことは山ほどあるけど言わへん。まとめ方やコンビネーションとか、いろいろ(注文は)あるけど、キリがないから言わん。ブランクを考えると合格点はあげた。“いまボクサーとしてどうなんよ?”と聞かれたら、まだそれを語る位置に達していない」
 手厳しい。
 大阪帝拳で練習が重なってもアドバイスは送らない。トレーナーのアトン・レチェル・ベディダがいるのに自分がアレコレと指導してしまえば、混乱させてしまうとの配慮からだ。ただ横目で寿以輝がどんな練習をしているかは見ている。゙
「アトントレーナーはよく勉強しとる。彼と話はしてはいないけど、ウチの練習をよく見ている。寿以輝は努力するしかない。練習は嘘つかん。昔からある言葉の通り。努力にまさる天才はなし」
 お得意の格言を使って我が息子へエールを送った。
 そして話が熱を帯びてくると思わず父としての本音が口をついた。
「倒すにこしたことはないけど、判定であっても技術を見せれば、おお!と言わせることはできるんよ。今は、まだそれができていない。判定になるくらいの方がええ。のちのちのことを思えばね。気負いすぎると危ないところもあるからな。冷静に。とにかく、反復練習。練習でやったことしか試合には出ん。寿以輝に必要なのは、リングの戦いでの“慣れ”」
 8年前にデビューしたが、まだキャリアは15戦14勝(10KO)1分。父は、キャリアを積み重ねることが、必要だと力説した。
 陣営では、与那覇戦の結果次第で、来年には、日本、東洋、WBOアジアの地域タイトルへ挑戦する青写真を描く。その先にある最終目標が世界のベルトだ。
「最終的に(世界)チャンピオンになったらOKやと思っている。何年後とか、気にしていない」
 寿以輝はそう語った。
 オールドファンは父の面影を残す寿以輝にロマンを感じる。アマゾンプライムビデオで生配信される11.15両国は、辰吉寿以輝の遅まきながらの全国区デビューであり、チャンピオンロードへの本格スタートにもなる。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)

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