• HOME
  • 記事
  • サッカー
  • 「日本が刀を抜く」なぜ日本サッカー協会は北朝鮮の“暴挙”を許さず意見書を提出したのか…平壌でのW杯アジア予選の安全安心確保
スタッフを威嚇し、審判に詰め寄るなどの“暴挙”を繰り返した北朝鮮のプレーに対して日本サッカー協会が意見書を提出(写真・AP/アフロ)
スタッフを威嚇し、審判に詰め寄るなどの“暴挙”を繰り返した北朝鮮のプレーに対して日本サッカー協会が意見書を提出(写真・AP/アフロ)

「日本が刀を抜く」なぜ日本サッカー協会は北朝鮮の“暴挙”を許さず意見書を提出したのか…平壌でのW杯アジア予選の安全安心確保

 日本サッカー協会(JFA)は3日、中国・杭州で開催中のアジア大会男子サッカー準々決勝で、日本代表と対戦した北朝鮮代表に反スポーツ的行為があったとして、アジアサッカー連盟(AFC)と国際サッカー連盟(FIFA)に意見書を提出したと発表した。日本が2-1で勝利した1日の試合で、北朝鮮は数々のラフプレーに加えて、給水ボトルを奪い取る際に日本のスタッフを威嚇した行為などで6枚ものイエローカードを受けた。JFAは一連の映像も添付した意見書で、選手の安全を守る上で必要な措置を求めた。

 拳を振り上げ殴らんばかりの威嚇行為

 

イエローカードをもらっても繰り返されたラフプレーや前代未聞の威嚇行為に加えて、試合後には負けた責任を転嫁して審判団を追い回す。ピッチ上で常軌を逸した立ち居振る舞いを見せ続けた北朝鮮に対して、対戦相手だった日本が動いた。
 JFAは1日に行われた杭州アジア大会の男子サッカー準々決勝で、対戦相手の北朝鮮に数々の反スポーツ的行為があったとして、3日付でAFCとFIFAに意見書を提出したと発表した。意見書に添付した該当映像の内容について、JFAは「特定のひとつの事象ではなく、われわれが試合を通して見たすべての反スポーツ的行為」と説明した。
 背景には代表選手の安全を守る狙いがある。
 問題となった一戦では、レッドカードに相当すると言っても過言ではない後方からの危険なタックルなど、前半開始直後から日本の選手がラフプレーの標的になった。北朝鮮がもらった6枚のイエローカードの対象には、日本のスタッフから給水ボトルを強引に奪い取る際に左拳を振り上げ、殴らんばかりに威嚇した前代未聞の行為も含まれていた。
 さらに1-2で敗れた試合終了直後には、複数の北朝鮮選手が血相を変えてウズベキスタンのルスタム・ルトフリン主審ら審判団を追いかけ回し、決勝点となった日本のPKが、誤審によって与えられたものだとして脅迫まがいの抗議を繰り返した。
 4日の準決勝で日本と対戦する香港のメディア『South China Morning Post』は、審判団が危険にさらされた試合後のピッチを「カオスな光景」と驚きを込めて伝えた。その上で北朝鮮のシン・ヨンナム監督が会見で発した言葉を「不思議な弁明」と一刀両断した。
 大荒れになった試合について問われたヨンナム監督がこう反論したからだ。
「試合中にわれわれの選手たち数人が、少し興奮しすぎていたのは認める。しかし、これがサッカーだ。サッカーの試合には対立がつきものだ」
 サッカーを含めたスポーツは言うまでもなく、公平なルールのもとで安心安全に行われることが大前提となる。そのなかで試合を裁く審判団へ不信感を抱き、敗因を転嫁し、さらにサッカーと無関係の心情や歴史的背景を持ち込めばもはや競技ではなくなる。選手の安全に加えて競技の価値を守る意味で、必要な措置を取ってほしいとJFAは要望した。
 北朝鮮にとって、杭州アジア大会はインドネシアの首都ジャカルタで開催された前回2018年のアジア大会以来、約5年ぶりの国際総合競技大会への復帰戦だった。北朝鮮は2020年に、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて突如として国境を閉鎖。韓国と同組だったサッカーのW杯アジア2次予選も2勝2分け1敗だった段階で棄権した。
 友好国の中国で開催される今大会は、復帰を果たす上で絶好の舞台だった。特に国内で絶大な人気を誇り、金正恩総書記も注力しているとされるサッカーはメダル有望種目であり、大会規定のU-24代表に3人のオーバーエイジを加えた陣容で臨んできた。

 

関連記事一覧