• HOME
  • 記事
  • 野球
  • 日ハム“ドラ1”吉田輝星とオリックス黒木優太の電撃トレードは2人の未来を考えた現役ドラフトを先取りする“人情トレード”
甲子園で金足農旋風を巻き起こした日ハムの吉田輝星がオリックスにトレード(写真・黒田史夫)
甲子園で金足農旋風を巻き起こした日ハムの吉田輝星がオリックスにトレード(写真・黒田史夫)

日ハム“ドラ1”吉田輝星とオリックス黒木優太の電撃トレードは2人の未来を考えた現役ドラフトを先取りする“人情トレード”

 日ハムの吉田輝星投手(22)とオリックスの黒木優太投手(29)の1対1トレードが成立したことが24日、両球団から発表された。甲子園で金足農旋風を巻き起こして2018年にドラフト1位で入団し、今なおファンの人気があるが、ブレイクのきっかけをつかめそうでつかめなかった5年目の吉田と2016年のドラフト2位で選手層の厚いオリックスでチャンスをつかめなかった元セットアッパー黒木との互いに環境を変えての奮起に期待が寄せられる“人情”トレードとなった。

 「申し訳ないし凄く悔しい」吉田輝星

 

 まるで12月8日に開催される現役ドラフトを先取りしたようなトレードだった。  伸び悩んでいる人気選手の吉田と、かつてセットアッパーを務め、先発転向した今季は、オリックスの豊富な投手陣の枠から漏れた黒木の電撃トレードが成立した。
 吉田は、高校時代にエースとして甲子園で“金足農旋風“を巻き起こし2018年のドラフトで根尾昂(中日)を外した日ハムに外れ1位で指名された。
 日ハムは高校生のルーキーに関しては焦らず育成するが、1年目の6月12日の交流戦の広島戦でプロ初登板、初先発のチャンスをもらい、5回を4安打1失点に抑えてプロ初勝利を手にした。その後は、伸び悩んだが、新監督に就任した新庄監督が昨季途中から中継ぎに配置転換して起用すると短いイニングで威力を発揮し、51試合に登板、2勝3敗5ホールド、防御率4.26の成績を残した。だが、後半に調子を落としたため、今季は先発に再転向したが、キャンプ、オープン戦から調子が上がらずに開幕1軍から漏れ、8月になって1軍昇格したが、わずか3試合の登板、防御率9.00の成績に留まっていた。
 吉田は21日に400万円ダウンの推定1600万円で契約更改を終えており、まさか水面下でトレードが進行しているとは思わなかっただろう。
 吉田は、球団を通じて「ドラフト1位でファイターズに獲得してもらって、5年間優勝に貢献するような活躍ができず申し訳ないですし、すごく悔しいです。たくさんの方々に支えられて感謝しかありません。ファンの皆さん応援していただいて、ありがとうございました」とコメントした。
 このままチームでブレイクのチャンスを待つより、ファームの投手がのきなみスピードを増し急成長するなど、投手育成に独自の成功ノウハウを持つオリックスの環境で再出発する方が、吉田にとってプラスと考えたのだろう。新庄監督3年目の来季は勝負の年。チーム防御率はリーグ3位の3.08と悪くないが、上沢がメジャーに流出する可能性もあり、計算の立たない吉田よりも、セットアッパーとしての実績がある黒木に魅力を感じたのかもしれない。 
 一方の黒木は2016年のドラフト2位で立正大からオリックスに入団。1年目から17年にはセットアッパーを任され、55試合に登板し6勝3敗、2セーブ、25ホールド、防御率4・22の成績を残す。だが、登板過多が響き、2019年に右肘のトミー・ジョン手術を受けた。リハビリ期間を経て2022年には27試合登板で2勝2敗、1セーブ、5ホールド、防御率2・36と復活を遂げてチームのV2、日本一に貢献したが、先発に挑戦した今季は12試合の登板、そのうち4試合の先発で1勝5敗、防御率6・58に終わり、結果を残せず豊富なオリックスの投手陣に割って入ることができなかった。オリックスからすれば、1軍での登板チャンスのある日ハムの方が黒木は能力を発揮できるのではないか、という“親心”があったのだろう。

 

関連記事一覧