• HOME
  • 記事
  • 格闘技
  • 「アーチュレッタに何かを言うのはやめて!」朝倉海がTKO勝利でRIZINベルトを奪還し体重超過の是非論を吹き飛ばす
朝倉海が体重超過したアーチュレッタを沈めてRIZIN王座を奪還(写真・RIZIN FF)
朝倉海が体重超過したアーチュレッタを沈めてRIZIN王座を奪還(写真・RIZIN FF)

「アーチュレッタに何かを言うのはやめて!」朝倉海がTKO勝利でRIZINベルトを奪還し体重超過の是非論を吹き飛ばす

 アーチュレッタは、試合後に行われた会見で、12月25日に腸の感染症を発症した影響で、減量ができず、前代未聞の体重超過を招いてしまったと説明している。
「お腹の調子が悪くて熱もあり、さらに腰痛も起こしていた。ずっと寝ていて動けず、(計量前日の)金曜日になっても体調が悪く、水抜きを始めても汗すら出なくなった」
 迎えた一戦で、最初にチャンスをつかんだのはアーチュレッタだった。1Rの2分過ぎに強烈な右ストレートからテイクダウンに持ち込み、さらにチョークを狙ってきた大ピンチを海がくぐり抜けた。突然の決着を見たのは2Rの3分20秒。左パンチを放ってきたアーチュレッタのみぞおちに、海の強烈な右膝がカウンターでヒット。たまらず崩れ落ちたところへ一気呵成のグラウンドパンチを見舞い続け、TKOで一気に試合を決めた。
「アーチュレッタの得意なレスリングの攻防になったとしても、対応できる準備はしていました。なので、あのテイクダウンは切れる自信があったし、フィニッシュに関してはそれまでの戦いのなかでリズムをつかんでいて、あのタイミングで膝が入りそうだな、と」
 準備を含めて必然の勝利だったと胸を張った海は、試合が終わった直後に握ったマイクを通して、スタンドを埋めたファンへ向けてこんなメッセージを伝えている。
「ひと言いいですか。アーチュレッタ選手が計量に失敗したけど、それを責めていいのは僕だけだと思っている。みなさんからアーチュレッタ選手に何か言うことはやめてください。彼も本当に一生懸命に対応してくれたので、僕からも感謝を伝えたい」
 この海の声が体重超過騒動の是非論の結論だったのかもしれない。
 榊原CEOは、今大会の開始前までにおけるMVPを、因縁の初対決で盛り上げた平本蓮(25、剛毅會)とYA-MAN(27、TARGET SHIBUYA)の2人とした上で、大会当日の大晦日のMVPを「一人を選ぶならば海かな」と総括した。
「大会前日に風雲急を告げて、試合が流れる、流れないも含めていろいろとありましたけれども、最終的には朝倉海の男気に本当に救われたと思っています」
 アーチュレッタ戦が、不透明になったトラブルだけではない。昨年まで大晦日に3連敗を喫していたジンクス。そして、昨年11月にYA-MANに惨敗を喫し、現在は休養を余儀なくされている実兄の朝倉未来(31、JAPAN TOP TEAM)の今後。これらが複雑に絡み合ったなかで生まれていた、未曾有のプレッシャーをはねのけた海はこう語る。
「僕たち兄弟は絶対に世界でトップを取れると信じている。なので、兄貴にもマジで頑張ってもらって、またモチベーションを上げて一緒に戦っていきたい」
 3年ぶりにベルトを奪還した海は、数時間後に迎えた20204年をRIZINタイトル防衛よりも、アメリカの総合格闘技、UFCへの挑戦に主軸を置きたい意向を示して、嫌な思い出を断ち切ったさいたまスーパーアリーナを後にしていった。
(文責・藤江直人/スポーツライター)

関連記事一覧