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なでしこのパリ五輪予選の北朝鮮開催が白紙に(写真・ロイター/アフロ)
なでしこのパリ五輪予選の北朝鮮開催が白紙に(写真・ロイター/アフロ)

なぜパリ五輪予選第1戦の北朝鮮での開催が“白紙”に戻ったのか…困惑するなでしこジャパン

 約5万人の大観衆で満員となった金日成競技場で行われた試合そのものも、不慣れな人工芝のピッチに苦しめられた末に0-1で敗れている。晩秋だった当時と異なり、真冬の2月は人工芝が凍りついている可能性も大きい。佐々木委員長が続ける。
「凍っているような人工芝のピッチでプレーするのは非常に危険だし、トレーニングの段階からリスクがある。選手を守る観点で言えば安全な会場や気候ではないですし、われわれが事前に視察する通常の準備もできない。われわれとしては、DPRコリアでの試合に臨む上での懸念といったものを、AFCに対して多少は伝えていたところです」
 JFAとして、アウェイ戦の中立地開催をAFCに対して働きかけたのか。佐々木委員長が言及した「懸念」に関して、JFA関係者は次のように補足した。
「年が明けてから随時DPRKFA側と調整を重ねてきたなかで、不確定というか不透明な部分が多かった。JFAとしてはこうした状況を、懸念としてAFCへ伝えたというよりは、今後へ向けてフォローをお願いする形で連絡を入れました。その上でAFCもFIFA(国際サッカー連盟)と協議を重ねた結果が今回の要請となっています」
 AFCと北朝鮮のやり取りを、JFAが共有したのは今月上旬だった。第1戦の日程そのものは変更がないと確認した上で、池田監督は13日から千葉市内で合宿を行う日程を組んだ。開催地をはじめとする第1戦の詳細が何も決まっていない以上は、日本を発つ日時や帰国便を含めて、14日以降の日程をすべて「未定」とする異例の事態を選ぶしかなかった。
 今後はAFCの最終的な発表を待つ。北朝鮮が平壌開催を変えない可能性もあるが、JFA側から中立地を希望する予定はない。佐々木委員長は「お互いに移動距離が近い中国か、という個人的な想定はある」としながら、第1戦まで2週間あまりに迫った段階で日程が白紙になった状況が、異例ではあっても非常事態ではないと受け止めた。
「相手のホームゲームが最も厳しいという考え方から逆算すれば、もし中立地での開催になれば、さまざまな案件がクリアになる。ただ、もともとそちら(平壌)で戦う心づもりでしたし、JFAの総務や現場のコーチ陣を含めてこれまでその準備を重ねてきました。最終的に元(の平壌)に戻ったとしても、すべてをポジティブにとらえていきたい」
 ただ、AFCだけでなくFIFAも動かした意義は大きい。
 3月26日には平壌の金日成競技場で、北朝鮮と森保ジャパンの北中米W杯アジア2次予選が組まれている。AFCが同試合の平壌開催を発表したのは1月30日。なでしこの件を介して両国間の事情を知ったAFCとFIFAが、再び動く可能性もある。
 この日はJFAの技術委員会も開催され、終了後にオンライン取材に応じた反町康治技術委員長(59)は3月26日へ向けて「粛々と準備を進めていくしかない」と言い、こう続けた。

 

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