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長谷部茂利監督(中央)が4年で福岡を変えた(写真・アフロスポーツ)
長谷部茂利監督(中央)が4年で福岡を変えた(写真・アフロスポーツ)

「今日で歴史が変わった」なぜアビスパ福岡は浦和レッズを倒して初のルヴァン杯王者となったのか…4年で“エレベータークラブ”を変えた長谷部監督のマネジメント能力

 YBCルヴァンカップ決勝が4日に国立競技場で行われ、アビスパ福岡が2-1で浦和レッズを撃破し、Jリーグ参入28年目で悲願の初タイトルを獲得した。初めて決勝に臨んだ福岡は開始わずか5分にMF前寛之(28)のゴールで先制。同終了間際にもDF宮大樹(27)が追加点を決めて、浦和の反撃を後半の1点に封じて逃げ切った。5年ごとに昇格しては1年でJ2へ降格するパターンを3度も繰り返してきた福岡がなぜ2021シーズンからJ1に定着し、国内三大タイトルのひとつを手にすることに成功したのか。

 公式戦の通算成績で6勝4分け17敗だった浦和を倒す

 

 口に出かけた言葉を、指揮官はすぐに飲み込んだ。
「今日はぐう……」
 優勝監督会見でのひとコマ。福岡の長谷部茂利監督は(52)はおそらく「偶然」と言いかけ、一瞬の間を置いてから、別の言葉で終わったばかりの大一番の総括を続けた。
「何回かに一度しか勝てないというか、パスの本数も含めてなかなか勝つに値しませんでした。アタッキングサードでのシュート数、そしてゴール数のところはわれわれの方が上でしたが、それ以外の内容のところではなかなか勝てていませんでした」
 公式戦の通算対戦成績で6勝4分け17敗と大きく負け越していた浦和との頂上決戦。案の定と言うべきか、前半のボール支配率は浦和が約70%と圧倒的に上回った。しかし、その前半に福岡は2ゴールをゲット。浦和の反撃を後半22分のMF明本考浩(25)の1点に封じて、大会最多の6万1683人が駆けつけた国立競技場に歓喜の雄叫びを響かせた。
 Jリーグ参入28年目で手にした悲願の初タイトルは必然の末にもぎ取った。周到に用意した浦和対策がほぼ完璧に奏功したからこそ、長谷部監督は「偶然」の二文字を引っ込めた。攻撃面における最大の準備が、左右からのグラウンダーのクロスだった。
 前回開始5分に前が決めた先制点を導いたのはMF紺野和也(26)だった。
 浦和のゴールキックを福岡の最終ラインがはね返し、ピッチの中央でFW山岸祐也(30)が後方へ落とす。すかさず前が右サイドの紺野へ大きく展開してカウンターを発動させ、自身は長い距離を駆け抜けて浦和ゴール前へ迫っていった。
 そして紺野は利き足の左足をちらつかせながら、浦和の左サイドバックの荻原拓也(23)と対峙する。自身が主導権を握った攻防で、一瞬の隙を突いて前へ出て右足を振り抜く。グラウンダーの高速クロスが浦和ゴール前を横切ったと思われた直後に、ファーサイドへトップスピードで走り込んできた前が体勢を崩しながら右足をヒットさせた。
 背後を突かれた浦和のキャプテン、右サイドバックの酒井宏樹(33)はまったく反応できず、ボールとともにゴール内へ転がり込んだ前を見送るだけだった。アディショナルタイム4分には、左CKの流れから再び紺野が左サイドでボールを持つ。今度は左足から放たれたグラウンダーのクロスを、攻め残っていた宮が左足で押し込んだ。
 最前線で体を張り続けた山岸が、地上戦に込められた秘密を明かす。
「あれ、浦和対策で今週1週間ずっと取り組んできたプレーなんですよ」

 

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