
数センチの矜持…日本ライト級王者の三代大訓が屈指の好カードを6回終了時TKOで制した理由とは…「2025年は勝負の年にしたい」
入場の花道では、中央大の後輩にあたる東京、パリ五輪代表の岡澤セオンが声をかけてくれた。
「心強いっすよね。セオンはデビュー戦からずっと応援にきてくれている。入場で姿が見えて陽気にさせてくれ、勢いをつけてくれた」
島根県の松江工業高時代に通っていたシュガーナックルジム松江、2021年東京五輪金メダリストの入江聖奈を輩出した同ジム米子から15人ほど応援団が、長距離バスで、遠路山陰から駆け付けた。キャリア8年目。負けられない理由が増えている。
4月に日本王者の仲里周磨(オキナワ)に判定勝利して新王者となった。8月のV1戦で宮本知彰(一力)に6回TKO勝ち、そして強敵の丸田を連続TKOで下してV2を果たした。
「2025年は勝負の年にしたい」
リング上で三代はそう宣言した。
ターゲットは1人。11月21日に保田克也(大橋)とのダウンの応酬の激戦を6回TKOで制してOPBF東洋太平洋、WBOアジアパシフィックの2本のベルトをまとめた宇津木だ。三代が昨年2月に横浜光へ移籍する前まで共に汗を流した元同門。ジムが変わった今だからこそ対戦が可能になった。
「(対戦したいのは)宇津木だけ。チャンスがあれば、いつでも次でも。保田戦は面白い試合だった。ダメージは心配だが、ファンとして熱くなった。ただつけいる隙はある。あとはIBF(挑戦者決定戦など)で声がかかれば。日本王座を返上してもいい」
ただ現実問題として来年のチャンピオンカーニバルで同級1位の村上雄大(角海老宝石)との指名試合を行わねばならない。
石井会長は「本人次第。チャンピオンカーニバルで防衛し、宇津木と3冠戦ができるのがベストだろうけど、本人が“よっしゃー”という気になってくれないと、日本タイトルの返上もある。とにかく宇津木、宇津木だからね」と、三代の意向を最優先に対戦交渉を進めていく考えを明かした。
世界を見ると、ライト級にはWBAがあの“最狂”ガーボンタ・デービス(米国)、WBCが元3冠王者の吉野修一郎(三迫)を一蹴したシャクール・スティーブンソン(米国)、IBFが3階級制覇王者の“精密マシン”ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)と超ビッグネームの王者が並ぶ。現在IBFで9位の三代が世界のチャンスを手にする可能性は、現段階では低いが、国内のライト級のレベルもかなり高い。
ライト級トーナメントを制した今永虎雅(大橋)、元2階級制覇王者の鈴木雅弘(角海老宝石)、再起した吉野、5年前に一度拳を交え、僅差の判定勝ちをしている元WBOアジアパシフィック、元OPBF東洋太平洋スーパーフェザー級王者の木村吉光(志成)もライト級に階級を上げてくる。宇津木と激闘を演じた保田、この日アンダーカードで1ラウンドTKO勝利し、米国修行を計画している高橋麗斗(パンチアウト)もいる。国内の“ライト級ウォーズ”を勝ち抜く猛者が世界へと近づく。三代は、これで19戦17勝(6KO)1敗1分の戦績となった。