
どうなる日本ダービー?!皐月賞馬ミュージアムマイルの2冠か、1番人気で敗れたクロワデュノールの逆襲か…同門対決の熱い再戦に注目
競馬の祭典「第92回日本ダービー」(G1、芝2400メートル)は今日6月1日、東京競馬場で行われる。最大のポイントは”同門対決”の第2ラウンド。皐月賞1番人気で2着の2歳王者クロワデュノール(牡3、斉藤崇)が雪辱するか、それとも皐月賞馬のミュージアムマイル(牡3、高柳大)が2冠に輝くのか。今年は新興勢力にも逸材がズラリ。展開のカギを握る馬もいて、見応え十分な“水無月ダービー”となりそうだ。
優駿にふさわしい精鋭18頭が集結
役者がそろった。
2022年生まれのサラブレッド7950頭の頂点を決める東京優駿、日本ダービー。青葉賞勝ちのエネルジコこそ戦線離脱したものの、超ハイレベルだった皐月賞上位組がすべて参戦する上に強烈なインパクトで別路線を勝ち上がった新興勢力もスタンバイする。まさに優駿にふさわしい選ばれし18頭だ。
今年の特徴は18頭すべてに大種牡馬サンデーサイレンスの血が流れていること。また日米オークスを制したシーザリオを母に持つ3兄弟エピファネイア、リオンディーズ、サートゥルナーリアの産駒が計4頭出走。さらに初の父子3代ダービー制覇に向け、ドゥラメンテ産駒が4頭、キズナ産駒が3頭、レイデオロ産駒が1頭挑むことだ。
またサトノシャイニングに騎乗する“レジェンド”武豊騎手に大記録がかかる。2005年ディープインパクト、2013年キズナの手綱を取っていたダービー最多6勝の武豊騎手が勝てば、同一ジョッキーによる3代制覇という空前絶後の金字塔を成し遂げることになる。これは世界でも前例がなく、武豊騎手も「いい馬。キズナの子どもに乗れるだけでうれしいし、勝てば血のドラマ。折り合いがポイントになるが、いいレースをしなければいけない」と胸の内を明かした。
これらに加え、近年の傾向でもあるのだが、大一番を前に騎手のシャッフルが目立つ。乗り代わりは半数の9頭に及び、京都新聞杯勝ちのショウヘイはクリストフ・ルメール騎手とコンビを組むことになり、友道康夫調教師は「最後にルメさんといういい騎手が回ってきた」とニッコリ。自身は日本ダービー3勝、今年のオークスもトライアル勝ちから間隔が詰まっていたカムニャックで制していて大谷翔平級の活躍をしても驚けない。
そして今年の日本ダービーで最も注目すべき点は、因縁浅からぬ”同門対決”だ。皐月賞では、どちらも不利を受けながら3番人気のミュージアムマイルが単勝1.5倍の1番人気クロワデュノールを直線で並ぶ間もなく差し切った。この2頭はノーザンファーム生産で馬主はサンデーレーシングという同門。ただし、昨年暮れ時点での評価はクロワデュノールが「別格」の存在でホープフルSを制し、3戦3勝としていた。
一方、「関脇クラス」だったミュージアムマイルは芝2000㍍の黄菊賞を完勝していたにもかかわらず、馬主サイドの使い分けでマイルの朝日杯FSへ挑戦。2着と力は示していた。
今回の再戦はどうか。ミュージアムマイルは、年明けに弥生賞4着を経て皐月賞でブレークしたわけだが、ダービーでは”マジックマン”ジョアン・モレイラ騎手からダミアン・レーン騎手に乗り替わる。
何しろ、この男は「テン乗りは勝てない」と不文律のように言われていた日本ダービーを2年前にタスティエーラで勝ち、69年ぶりに封印を解いた凄腕だ。モレイラからタスキを受け、いとも簡単に2冠に導く可能性は十分ある。実際に1週前の追い切りの騎乗後に「イメージ通り、とてもいい馬。いろんなオプションがありそう。テン乗りの不安はない」とすっかり手の内に入れていた。
ただ、皐月賞と日本ダービーは当然、距離もコースも違う異質なレース。過去にも総合力の高さで2冠を達成した馬はいるが、夢破れた馬も少なくない。
皐月賞の勝ち時計ベスト5と日本ダービーの成績をみるとこうなる。
1:57.1 ジャスティンミラノ→ダービー2着
1:57.8 アルアイン→ダービー5着
1:57.9 ディーマジェスティ→ダービー3着
1:58.0 ロゴタイプ→ダービー5着
1:58.1 サートゥルナーリア→ダービー4着
このように皐月賞を高速時計で制覇した場合、ダービーで蹉跌するケースが多い。思えば2019年、レーン騎手がルメール騎手の負傷で急きょ、手綱を取った皐月賞馬サートゥルナーリアもその口。1分57秒0の皐月賞レコードで勝ったミュージアムマイルもその俊敏性や機動力、直線での爆発力が強すぎるがゆえに、2000㍍がベストである可能性がある。アイルランドの名伯楽、エイダン・オブライエン調教師風に言えば「2400をこなす中距離馬ではなく、2000㍍に強い中距離馬」ということだ。また金曜、土曜の雨で、パンパンの良馬場は望めそうになく、そこもミュージアムマイルのマイナス材料。
一方、クロワデュノールにとって皐月賞はまさかの敗戦。ただし「三冠濃厚」と言われる中、2020年にコントレイルで無敗三冠を達成している矢作芳人調教師が「そんな生やさしいものではないですよ」と予見しており、実際に大本命馬の宿命か、厳しい競馬を強いられた。向正面で寄られ、急停止から急加速し、その後の仕掛けが早まったことが敗因のひとつだろう。
「あの不利がなければ」と斉藤崇史調教師は歯ぎしりしたが、コンビの北村友一騎手は皐月賞前に「負けたくないレース」と話しており、この気持ちがリズムの乱れにつながったのかもしれない。さらに4か月ぶりのぶっつけ本番となる中、状態が上がっていなかったことも確か。その点、今回は、北村友一騎手が3週連続で追い切りに騎乗し、そのたびに「皐月賞以上の状態」と確信のコメント。
レースへ向けても「馬を信じ、自分を信じ、やるべきことをしっかりやる」と気負いはなく、斉藤崇史調教師も「馬体が全然違う。皐月賞前より一段も二段も上。キタサンブラック産駒なので東京2400は心配ない」と逆転への手応えをつかんでいる。
となれば、様相はマカヒキが勝った2016年と酷似。皐月賞2、3着馬が巻き返したケースに近いのではないか。ファンは良く知っていてクロワデュノールが前売りオッズで単勝2.5倍と1番人気に支持された。ミュージアムマイルは3番人気の7.4倍だ。