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9.14決戦に向けた公開練習で井上尚弥が迫力満点のミット打ちを披露(写真・山口裕朗)
9.14決戦に向けた公開練習で井上尚弥が迫力満点のミット打ちを披露(写真・山口裕朗)

なぜ井上尚弥は最強挑戦者の発言を「的を外している」と批判し、大橋会長は「結末が見えた」とV予告したのか…「強引なボクシングをする気はない」が勝利へのカギ

 

プロボクシングのスーパーバンタム級の4団体統一王者、井上尚弥(32、大橋)が2日、横浜の大橋ジムで、9月14日に名古屋で迎え討つWBA世界同級暫定王者、ムロジョン・アフマダリエフ(30、ウズベキスタン)戦に向けての練習を公開した。アフマダリエフは、前日に「私が総合力で上」と豪語していたが「的を外している。総合力は絶対に負けていない」と対抗。改めてKOを狙わず勝利に徹することを明かし、大橋秀行会長(60)は、過去最強の挑戦者であることを認めた上で「結末が見えた」と早くも勝利宣言した。また試合当日には、来年5月に東京ドームでの対戦が計画されているWBC&IBF世界バンタム級王者の中谷潤人(27、M.T)を招待することを明らかにした。

 「アフマダリエフの唯一怖いところはフィジカル、パワー面」

 最強挑戦者の発言が2階級4団体統一王者のプライドを刺激したのか。前日の公開練習でアフマダリエフが発した「総合力で私が上」というコメントへの感想を聞かれた井上は、一瞬、ニヤっと笑い、こう返した。
「そのコメントは見たんですが、そこに関してはちょっと的を外している。総合力は絶対に負けていないと思うんで。唯一アフマダリエフの怖いところは、フィジカル面、パワー面」
 メラメラと燃える対抗心と冷静なアフマダリエフ分析が交錯した。
 前日の公開練習を見た真吾トレーナーも「バランスとパワー。上半身ががっしりしている」と、その頑丈さとパワーを警戒していた。井上も父から報告を受けた。 
 公開練習の映像では「雰囲気だけを」確認。
「プロのキャリアとしてはそこまではないが、アマ時代に世界を飛び回って試合をしている選手だけあって落ち着いているし、自信に満ち溢れた表情をしている。そういう選手こそ、こういう試合に強い。映像を見て(気持ちが)引き締まった」
 だが、井上は頑丈さではアフマダリエフに負けていないマーロン・タパレス(フィリピン)を呼びスパーリングを重ねてきた。タパレスは、2023年4月にアフマダリエフを2-1判定で下してWBA&IBFの2つのベルトを奪い、同年12月に井上に10回KOでその2つのベルトを奪われた現役のサウスポーだ。
「凄く参考になり、いい練習をしてきた。ただ頑丈な相手に真っ向から打ちにいけば、手を焼くのかもしれないが、今回は強引なボクシングをする気はない。いくら頑丈な選手でも(パンチが)効くときは効く」
 すでに対策ができていることをほのめかした。
 真吾トレーナーが横から「昨日それを会長に言ったんですよ。すると、会長は”そういう選手に限ってコロっといく”と」と口を挟んだ。
 大橋会長はその発言を補足して早くも勝利を予告した。
「たいてい打たれ強い顔をしたボクサーはアレッ?ていう感じで(倒れて)いく。なんとなく結末は見えた。どういうパンチでどうなるか。なんとなく予測はついている」
 タパレスからは、実際に拳を重ねたボクサーにだけわかるアフマダリエフのクセや特徴を通訳を通じて入手したという。
 ただし大橋会長はアフマダリエフを過去最強の挑戦者であることは認めている。「オールラウンドのボクサー。総合力のある選手には弱点はない。ロドリゲス、ドネア、フルトン、ネリの遥か上にいる存在。フルトンには怖さなかったがアフマダリエフにはうまさも怖さもある」と改めて警戒心は強めた。
 だから井上も「強引なボクシングをする気はない」という。
 そして、この言葉が試合のポイントだ。
 無理にビッグパンチは打たず、ジリジリとプレスをかけてアフマダリエフの手数を減らしながらラウンドを支配して削っていく。ボクシングIQをフル回転させた技術戦。どこかでチャンスがあれば倒しにいくし、アフマダリエフのビッグパンチにカウンターが炸裂するパターンもあるだろう。
 7月の会見で言った「判定決着でいい」という方針に変更はない。

 

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