
まさか?異変?井上尚弥vsアフマダリエフ戦の裏で大橋会長を“ビビらせた”2つの不安…「足がつったんじゃないかと心配したんだ」
プロボクシングのスーパーバンタム級4団体統一王者、井上尚弥(32、大橋)が15日、横浜市内の大橋ジムで一夜明け会見を行った。井上は14日に名古屋のIGアリーナでWBA世界同級暫定王者のムロジョン・アフマダリエフ(30、ウズベキスタン)を3-0判定で下した。スピードとステップワークを駆使した勝負に徹したヒット&アウェイのボクシングで最強挑戦者を完封したが、大橋秀行会長(60)は2つの不安材料があったことを明かした。
「良すぎて逆に怖かった」
「作戦通りの予定以上のいい展開で勝てた。ホッとしたのと満足感」
一夜明け会見で大橋会長のえびす顔が弾けた。井上の完勝とは対照的に4回TKO負けを喫してWBO王座から陥落した武居由樹と共に名古屋から新幹線で横浜に帰ってきた大橋会長は、駅でファンに歓待され、その反響の大きさを実感した。
1万6000人の超満員のファンで膨れ上がったIGアリーナでは「MJコール」にかぶせるような大きな「ナオヤコール」が1ラウンドから12ラウンドまで何度も断続的に起きた。
大橋会長は「(過去で)一番凄かった。みんなの応援が力になるって、そういうことなんだな」と感動を覚えたという。
「強い者同士のテクニック合戦になると、ああいう芸術、アートな世界になる。KOがわかりやすいが、それとは違うわかりやすさがあった」
大橋会長は、井上のスピードとステップワークを駆使してヒット&アウェイを徹底してポイントアウトした戦いを絶賛した。
だが、リングサイドにいた大橋会長は2つの不安を抱いていたという。
ひとつは、7ラウンド終了後のインターバルで、真吾トレーナーが、井上のふくらはぎを叩くようにマッサージしていたシーンだ。真吾トレーナーは、11ラウンド終了後にも、インターバルで太腿あたりを叩くようにマッサージしていた。
「足がつったんじゃないかと心配した。過去にもあったからね」
今回の試合はフルラウンドでステップワークを駆使した。当然、足には、これまで以上の負担がかかる。だが、それは「足がつらないようにするための予防のマッサージ」だった。大橋会長はそれを聞いて安心したという。
過去のトラウマがあった。2014年4月に井上は、プロ転向6戦目でWBC世界ライトフライ級王者アドリアン・エルナンデス(メキシコ)に挑戦して6ラウンドTKO勝利した。しかし、減量苦の影響で、3ラウンド終了時点で左足の太腿の裏がつり、足が動かない状態になった。最終ラウンドまでは持たないと陣営が判断してGOサイン。6ラウンドに仕留めた。
近年では、2020年11月の新型コロナ禍での米国ラスベガスでのWBA&IBF世界バンタム級王者時代のジェイソン・マロニー(豪州)戦。7ラウンドKO勝利したが、この試合も1年のブランク明けと、減量の影響が重なり、3、4ラウンドくらいから足がつったような状態となり、7ラウンドの開始直前に井上が自ら両足の腿をグローブで叩いていたほどだった。
もしアフマダリエフ戦で異変が発生していれば、足を止めた打ち合いを行わねばならず、井上が「倒したくてもブレーキをかけていた」ボクシングができなくなっていた。
「自信過剰となって打ち急ぐところを狙っているのをヒシヒシと感じた」アフマダリエフの罠にはまっていた危険性もあったのかもしれない。