「オレ嫌われてんのかな」異例の大ブーイングを浴びた那須川天心は何が狂って井上拓真に“完敗”したのか…“天心パパ”は「倒しにいっていない」と悔し涙を浮かべて激怒の説教
帝拳の浜田剛史代表は「4ラウンドでイーブンだったので、このやり方ではポイントにならないと焦ったのも事実。井上サイドは、押せ押せムードできた。天心の下がりながらのパンチがポイントになっていない。どこかで前へ出て、いいイメージを(ジャッジに与えたい)というのが焦りになった。7回に頭をつけて打ちにいった。いろんなパターンを(スパーリングで)やってきたが、頭をつけての接近戦は、あまりうまくいっていなかった」と明かす。
今回、帝拳サイドはスタイルの違う5人のパートナーを海外から呼び対策を練ってきたが、インファイトの練習では感触をつかめていなかったというのだ。
「距離感が上手かった。練習しているものが出せない、間合い、距離感が拓真さんにあった。そこが敗因。ずっと先手を取られた。経験の差で立て直された」
この7ラウンドでは天心が拓真を両手でコーナーへ突き飛ばすと9227人で埋まった場内から大ブーイング。レフェリーは天心に注意を与えた。
「もっとやさしくしてね(笑)故意じゃない。押してもいない。格闘技のクセで、ちょっと腕が出っちゃったりする。反則ではない。そこは許してよ。あんなブーってすることないじゃん。初めてですね。日本ではブーイングはあまりない。嫌われているんですかね?」
天心はボクシングファンを敵に回していた。それは「時代を変える」「革命を起こす」と乗り込んできた異端児に対する拒絶反応だったのかもしれない。場内は「タクマコール」が天心のそれを上回った。
「アウエーだったと思う。ボクシングに入ってきて、みなさん生意気だと思っている。その選手がやられるところ、落ちてくるところを見たい、という声はわかっている。すべてを受け止めている。危害さえ加えなければ何を言ってもいい」
試合後天心は冷静にそのブーイングの理由を分析していた。
天心はボクシング転向後もキックスタイルでインターバルで座らないことを貫いていたが、ついに7ラウンド終了後からイスが出され、コーナーで座るようになった。それはピンチを井上陣営に知らせるサインになった。
8ラウンドの公開採点では一人が「76-76」をつけたが、後は「77-75」「78-74」とつけ、天心が攻撃に転じなければならない状況に追い込まれた。それでも天心はまだ迷っていた。
「ポイント差を聞いた時に焦りはあった。どうしようか、初めてだなと。スパーで自分が良くないパターンの時になってしまっていた。どうしようかなと、試合中に迷いが出ると判断が遅れる。そこを先に取られた。格闘技は、一瞬の間が大事。そこでの経験の差、ボクシングの深みの差でやられた」
それが後手に回った理由だ。

