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浦和レッズが延長戦の末、PK戦を制して3大会ぶりのACL決勝進出を決めた(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)
浦和レッズが延長戦の末、PK戦を制して3大会ぶりのACL決勝進出を決めた(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

なぜ浦和レッズは全北現代との”死闘”を制してACL決勝進出を決めることができたのか?

 今シーズンのJ1リーグ戦を振り返れば、新型コロナウイルス感染症対応ガイドラインで禁止されている、意図的かつ継続的な声出し応援を一部サポーターが繰り返して各方面から批判を浴びた。一部サポーターの暴走を抑えられなかった運営責任が問われた浦和には、歴代最高額に並ぶ2000万円の罰金が科されたばかりだった。

 迎えたACL東地区のノックアウトステージ。コロナ禍が考慮され、ホーム&アウェイ方式から日本での集中開催、それもすべて一発勝負となった計7試合は、主催するアジアサッカー連盟(AFC)の方針のもと、会場となった埼玉スタジアムおよび浦和駒場スタジアムのスタンドの一部に声出し応援エリアが常設された。

 収容人員が上限の50%とされたため、埼玉スタジアムで浦和が戦った3試合では全北現代戦の2万3277人が最高だった。しかし、北側のゴール裏からはすべての試合で大音量の声援が響きわたり、この夜は南側のゴール裏も浦和のファン・サポーターにあてがわれた約60%の部分が真っ赤に染まった。

 コロナ禍前の埼玉スタジアムを思い出させる光景が、浦和の選手たちをどれだけ奮い立たせていたか。たとえばフランスの名門オリンピック・マルセイユから昨夏に加入したDF酒井宏樹(32)は、ファン・サポーターの存在を決意と覚悟に変えていた。

「僕たちに大きなアドバンテージがある大会なので、必ず一番上までいかないといけないし、お世辞でも何でもなく、そのために必要な12番目の選手だと思っている」

 埼玉スタジアムの大歓声を初めて経験しているユンカーも心を震わせた一人だ。

 オウンゴールで勝ち越し点を奪われた直後。心が折れそうな場面で大声援がさらにボリュームを増したなかで、DF明本考浩(24)が放ったヘディングシュートのこぼれ球に必死に詰め、利き足とは逆の右足で全北現代のゴールネットを揺らした。

 この時点で時計の針は延長後半15分を指していた。2-2のままもつれ込んだPK戦では静寂に支配されるなか、1番手のDFアレクサンダー・ショルツ(29)に続いて成功させたユンカーは感謝の思いをファン・サポーターへ捧げている。

「3試合すべてで、ものすごく偉大なサポーターが後押ししてくれた。PK戦になるとさらに相手へプレッシャーを与えてくれて、われわれにとってすごくアドバンテージをもらっている状況でプレーできた。彼らの、サポーターの勝利でもあると思っている」

 全北現代の3人目が成功し、浦和の3人目、MFダヴィド・モーベルグ(28)が止められたPK戦は最後の5人目を待たずに、3-1のスコアで浦和に凱歌が上がった。全北現代の4人目、キャプテンのDFキム・ジンスの一撃は右ポストに弾かれ、対する浦和はMF江坂任(30)がゴール左隅へ確実に決めた。

 

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