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非公表の阪神は高松商のスラッガー浅野翔吾を巨人との競合覚悟で1位指名へ(写真・日刊スポーツ/アフロ)
非公表の阪神は高松商のスラッガー浅野翔吾を巨人との競合覚悟で1位指名へ(写真・日刊スポーツ/アフロ)

なぜ9球団が1位指名公表の異例ドラフトが起きたのか…SNSでは「ドキドキ感なくなった」失望の声も…残る3球団の動向は?

 

いよいよ今日注目のドラフト会議が開催される。19日には、中日が、一転、1位で150キロ右腕の仲地礼亜(沖縄大)の指名を公表、ヤクルトも、社会人ナンバーワン投手の呼び声が高い吉村貢司郎(東芝)の1位指名を公表し、阪神、横浜DeNA、千葉ロッテを除く9球団が1位指名を公表するという異例のドラフトとなった。SNS上では一部のファンからは「ドキドキがなくなる」と嘆く声や「逆指名時代に戻った」などの意見も出ているが、なぜ異例の状況が生まれたのか。そして残る3球団の動向は?

阪神は巨人との競合覚悟で高松商高スラッガー浅野を1位指名へ

 過去に例がない。

 ドラフト前日までに12球団中9球団が1位指名を公表するという異例のドラフト。順を辿ると、まず9月28日に巨人が高校通算68発の浅野翔吾(高松商高)の1位指名を明らかにして先陣を切り、続いて10月10日にソフトバンクが超大型遊撃手のイヒネ・イツア(愛知・誉高)の指名を宣言。 11日には西武が左のスラッガー蛭間拓哉(早大)、日本ハムが“二刀流”矢澤宏太(日体大)、さらに13日に広島が151キロ右腕の斉藤優汰(北海道・苫小牧中央高)、14日にオリックスが即戦力左腕の曽谷龍平(白鷗大)、18日に楽天が157キロ右腕の荘司康誠(立大)の1位指名を公表。 そして最後は、「ドラフト1位は公表しない」と立浪監督が公言していた中日までが仲地、ヤクルトも吉村を1位でいくことを公表した。SNSでは、「ドキドキ感がない」、「まるで逆指名時代に戻った」などの声も飛ぶ“無風ドラフト”に。

 なぜこのような状況が起きたのか。

 かつてヤクルトで編成部長としてドラフトの指揮を執り、阪神でもスカウトを経験、“名将”野村克也氏の側近としてユニホームも着た松井優典氏(現・NPO法人ファイアーレッズメディカルスポーツクラブ・アドバイザー)は、「9球団も公表するのは記憶にない。主な理由は3つ考えられる」と分析した。    

 ひとつ目は今回のドラフト市場の人材不足の影響だ。

「たとえ重複しても絶対に1位でいきたいと思える候補が少ないということが影響している。全体のレベルを考えると、もし外れ1位となった場合に評価がかなり落ちる選手にいかざるを得ない状況になるので、まず1位を絶対に確保しておきたいという競合のリスクを考慮しての安全策。他球団を牽制して単独で取ろうとしていると思う。それだけチームの編成におけるドラフトの占める割合は大きい」

 ふたつ目は、それぞれのチーム事情。

「即戦力投手を絶対に欲しい球団、何年後かのエース候補が欲しい球団、野手に関しても、即戦力のスラッガー、欠けているポジション求める球団、数年後の主軸になる可能性を持つ逸材、主軸が老齢化しているポジションを将来埋める素材型選手を確保しておきたい球団など事情が違う。そのため9球団が別々の選手を1位指名公表するという異例の事態になったのかも」

 確かに巨人は、将来、岡本和真と共にクリーナップを打てる野手の育成が求められ、浅野があてはまるし、ソフトバンクも“ポスト今宮”を準備しておきたいため、身体能力抜群のイツアを長期計画で確保したいことは理解できる。西武は今季のチーム打率.229がリーグワーストで外野手を固定できず「打てる即戦力の外野手」が補強ポイントで東京6大学で現役最多の12本塁打を放っている左打者の蛭間に照準を合わせた。即戦力投手が必要な広島が高校生の将来性にかけたのは意外だが、トータルで見て、今年の即戦力投手と言われる大学、社会人投手よりも斎藤を評価したのだろう。2位以下で即戦力投手を確保できるという目論見もあるのかもしれない。

 

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