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大谷が6回一死まで完全投球したアストロズ戦の変化量プロット(※ピンクがスライダー。赤がフォーシーム。緑がスプリット。薄いピンクがカーブ。Baseball Savantのデータを利用し、筆者が作画 単位:センチ)
大谷が6回一死まで完全投球したアストロズ戦の変化量プロット(※ピンクがスライダー。赤がフォーシーム。緑がスプリット。薄いピンクがカーブ。Baseball Savantのデータを利用し、筆者が作画 単位:センチ)

大谷翔平の“新魔球”正体をデータ検証…判明した投球術とは?

 もっとも開幕戦で大谷は80球の内12球、つまりスプリットを15%も投げている。比率としては決して低くはない。では、なぜ使えない球を投げたのか? その問いに大谷は、「良くないから投げないということはない」と説明した。

「悪くても投げなきゃいけないこともある。今日は悪かったですけど、それなりには投げたので、パーセンテージの管理もしました」

 それはすべて20日のアストロズ戦、いや、さらに先を見据えての判断だった。

「(アストロズは)今後、何試合かやっていく、同地区の相手。今日だけで終わるものではないので」

 例えば、「この球種は悪いから投げない」とみなされれば、相手は狙いを絞りやすくなる。悪くても十分な数を見せておけば、相手の意識に残る。それを伏線とし、20日の試合で回収したのだ。

 開幕戦では、追い込んでスライダーが一つのパターン。相手は当然、その配球パターンを警戒したが、前回、それなりに見ており、さらにこれまでの経験上、スプリットを排除できない。

 結局、20日の試合では2ストライクからの配球としては、スプリットが11球(38%)、スライダーが9球(31%)、フォーシームが6球(21%)だったが、追い込んで許した安打はわずか1本。

 もちろん、スライダーが相変わらず鋭く、スプリットもキレが復活。しかし、開幕戦でスプリットが安定しなかったことにもかかわらず、あえて使ったことが、結果として生きた。

 ところで、図1と図2を見比べると、2つのことに気づく。実は、開幕戦でもそうだったが、昨年あれだけ投げたカットボール(黄色の点)を1球も投げていないのである。レンジャーズとの2戦目でも、わずか4球だった。比率でいえば、昨季は12.1%。今季は1.7%。これはどういうことか?  また、20日の試合では、昨季終盤から取り組んでいるチェンジアップのような軌道のツーシームジャイロスプリットを1球も投げなかった。

 図2では、スプリットが一か所にかたまらず、右に広がっていることが分かる。その右に点在しているのがツーシームジャイロスプリットだが、図1を見ると1球もそういう球がない。これは今季初めての傾向だった。

 当然、27日(日本時間28日)に大谷と対戦するガーディアンズは、そのことを把握している。

 ツーシームジャイロスプリットは、紛れもなく新球種の部類であり、試行錯誤している段階だからこそ、一時的に封印した可能性もあるが、大谷は理由を口にしていない。となると、ガーディアンズの打者は打席で考える。それこそが狙いなのかもしれないが、そんなことまで考えると、明日の先発でガーディアンズ打線とどんな駆け引きが行われるのか、いっそう興味深くなる。  ちなみにガーディアンズ打線は今季、打率でア・リーグトップ。長打率が3位、OPSは4位、得点では4位である。

  (文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)

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