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横浜DeNAの伊勢大夢が7回一死三塁のピンチに救援登板。わずか3球で近本、大山を凡退させた
横浜DeNAの伊勢大夢が7回一死三塁のピンチに救援登板。わずか3球で近本、大山を凡退させた

横浜DeNAが“三浦マジック”炸裂で阪神に“逆王手”…絶体絶命ピンチに伊勢が近本との心理戦を1球で制した理由とは?

 横浜DeNAが9日、横浜スタジアムで行われた阪神とのクライマックスシリーズ(以下CS)のファーストシリーズ第2戦に1-0で勝利し、対戦成績を1勝1敗として“逆王手”をかけた。光ったのは三浦大輔監督(48)の采配だ。2安打無失点の先発の大貫晋一(28)が1-0で迎えた7回に一死三塁のピンチを背負うと伊勢大夢(24)にスイッチ、しかも回跨ぎをさせた。また5番の宮崎敏郎(33)にプロ初となるバントを命じチームに一体感が生まれた。いよいよ勝負は最終決戦へ。横浜DeNAは勝ち、引き分けでファイナルステージへ駒を進めることになる。

 「相手(近本)も焦っているはずだ」

 

 短期決戦の“魔術師”と言っていい。監督就任2年目。指揮官としてはCS初体験の横浜DeNA三浦監督の采配が冴えわたった。
 1-0で迎えた7回。ここまで阪神打線をわずか2安打無失点に抑え込んでいた先発の大貫が一死三塁のピンチを背負うと三浦監督は迷わずベンチを出て投手交代を告げた。
 打席には、前日に決勝タイムリーを含む3安打、この日も第1打席にヒットを放っている近本。三浦監督が選んだのは左腕のワンポイントではなく伊勢だった。
「準備をさせていた。1点もやれないところ。伊勢しかなかった」
 三浦監督は詳しく起用理由を語らなかったが、外野フライ、あるいは、三塁走者が俊足の中野であることから、内野ゴロでも同点になり、セーフティースクイズも考えられる絶体絶命の場面。理想は三振か内野フライで、伊勢の球威に賭けたのだろう。
 伊勢も心の準備を整えていた。今季の近本とは1度の対戦しかないが、打ち取っていてデータ重視のベンチの傾向からすると自分に出番が回ってくると用意していた。
「1点は仕方がない。でも(勝ち越しを許す)2点目は絶対にダメ。もし(1点を)取られた場合は、ズルズルいかないように最低のラインを準備した」
 伊勢は冷静だった。
 そしてこうも考えていたという。
「相手も勝ちたい気持ちが強い。こういう場面は絶対に相手が焦ってくる。普通なら投手が苦しい場面だけど、ボール、ボールで厳しくいくより、案外、アバウトにいったほうが強いボールを投げられる。あとは気持ちだけ」
 雨の降るハマスタでの緊迫の心理戦。
 捕手の伊藤が初球に出したサインはストレート。外角低めにミットを構えていが、150キロのそれは、逆球となりインハイにいった。近本は予想通りに初球から食いついてきた。“焦り”が力みに変わり、伊勢の気迫満点のストレートが手元に食いこむ。打球はポーンと三塁のファウルゾーンの方向へ打ち上がった。近本は「しまったあ」の顔。近本を1球で打ち取り、二死にすると続く大山にも2球続けてストレートで勝負してセンターフライに打ち取った。わずか3球、されど3球。全球ストレート、全球ストライクで、同点やむなしの場面を“伊勢大明神”が無失点で切り抜けたのである。
 今季は71試合に投げ39ホールド。数多くの修羅場をくぐり抜けてきた。絶対に打たれてはならない局面にくると、明大時代に味わった大学選手権での緊張感を思い出すという。「きついものだった」。負けたら終わりのトーナメントを戦ってきた経験が伊勢のピンチに動じないバックボーンにある。
3年目にして7回、あるいは“8回の男”としてブレイクした。伊勢は、その理由を「ストライクゾーンで勝負できているのが一番。去年、一昨年と、ボールが先行すると、やばいやばいとなりバッターと勝負できていなかった。今は自分の間合いで相手にアジャストできる」と分析している。

 

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