「三振狙い」オリックス中嶋采配がズバリ…なぜ育成出身“ブルペン四天王”の宇田川優希はピンチに連続三振を奪えたのか?
日本シリーズの第4戦が26日、京セラドーム大阪で行われ、オリックスが1-0の完封リレーでヤクルトを下してシリーズ初勝利、対戦成績を1勝2敗1分けとした。勝負を分けたのは、5回一死三塁の同点ピンチにマウンドに送り出された宇田川優希(23)が山崎晃大朗(29)、山田哲人(30)から連続三振を奪った場面。中嶋総監督(53)の勝負采配に育成ドラフト出身の“ブルペン四天王”の1人が応えた。打線はまだ目覚めないが、オリックスの武器であるリリーフ陣で反撃のシリーズ1勝をもぎとった。
5回一死三塁の同点ピンチを連続三振で切り抜ける
中嶋監督が勝負手を打った。
1-0で迎えた5回。粘り強い投球内容でヤクルト打線を翻弄。無失点に抑えていた山岡が一死から塩見にセンターフェンス直撃の三塁打を浴びると、同点のピンチに迷わず宇田川にスイッチした。2020年型勝利方程式の繰り上げ起用である。まだ山岡の球数は70球。その采配に場内がざわつきはしたが、中嶋監督には確信があった。
「山岡が頑張ってくれていたんですが、ちょっと70、80球あたりでバテるといいますか、球が浮きますので、あそこは三振をとれるピッチャーと思い、宇田川でいきました」
内野は前進守備を敷いたが、三塁走者は足のある塩見。内野ゴロでも外野フライでも同点にされる。この絶体絶命のピンチを切り抜けるのには山崎を三振に打ち取るしかなかった。
早いイニングからの投入もあることを知らされていた宇田川は堂々としていた。その時の心境を試合後のお立ち台で聞かれ「なんも考えていないです」と答え、隣にいた山崎颯一郎の爆笑を誘っていたほど。ただ三振を狙っていたという。
捕手の若月のブロッキングを信用して度胸満点の徹底したフォーク攻め。6球中、ストレートはたった1球という配球で、しかも、そのカウント1-1からのストレートをファウルにさせて前には飛ばさせない。最後も見逃せばボールのフォークに、山崎は手を出してスイングアウト。二死にすると、前日に先制3ランで復活した山田には、一転、最速156キロのストレートを3球続けて球威で押し込み、カウント0-2から、ワンバウンドとなるフォークを見せてから、最後は、フォークをわざとストライクゾーンに小さく落としてストライクを取りにいった。思わぬ球筋に幻惑された山田は手が出ない。見逃しの三振である。
パ・リーグの野球に詳しい阪神、ダイエー(ソフトバンク)、ヤクルトOBで、評論家の池田親興氏は、宇田川の長所をこう説明する。
「184センチの長身からリリースの位置を体の骨盤の範囲から外さずに真上に置いて投げ下ろしてくる。この角度は初見では戸惑うし、150キロ後半のストレートと同じ腕の振りで、大きく落とす勝負球と、小さく落とすカウント球の2種類のフォークがあるので、さらに対応が難しい」