W杯でドイツ、スペインを破った森保監督の2026年大会までの続投が決定した。写真右が日本サッカー協会の田嶋会長、左が反町技術委員長
W杯でドイツ、スペインを破った森保監督の2026年大会までの続投が決定した。写真右が日本サッカー協会の田嶋会長、左が反町技術委員長

森保監督の続投は正解なのか…メリットとデメリットを検証した

 選手たちが思い描いているのは、カタール大会で見せた粘り強い守備をベースにしながら、ボールを奪ってからの速攻だけでなく、ボール支配率を高めた遅攻を融合させたスタイル。代表を進化させていくプロセスを、森保監督が示せるかどうかにある。
 カタールから帰国後に第一次森保政権で攻撃面を担った上野優作(49)、横内昭展(55)両コーチが退任。それぞれJ3のFC岐阜、J2のジュビロ磐田の新監督に就任した。特に後者は前身の日本リーグ、マツダ時代から気心の知れた指揮官の精神的支柱的な存在だった。
 新たにコーチを補充するのか。スタッフ自体を再編成するのか。二者択一を問われた森保監督は「両方を急がずに決めていきたい」と答え、さらにこう紡いだ。
「まずは日本のために戦うという気持ちを持ってくれている人で、その上でボールを握りながら、アタッキングサードのところで、シュートのチャンスをより多くするというところに長けている元選手のコーチを招へいできればと思っています」
 モチベーターとしての能力に長ける一方で、森保監督は特に攻撃面における戦術的な積み上げを不得手としてきた。0-1で敗れたコスタリカとのグループステージ第2戦では、ボール保持率で優位に立ちながら攻めあぐね、ミスから決勝点を献上した。
 引いて守備を固めた相手を崩す作業は、強豪と呼ばれるチームでも難度が高い。しかし、これを完遂できなければ、カタール後に目指していく領域にはたどり着けない。
 理想に掲げるコーチを招へいできず、さらに森保監督も選手たちに明確な処方箋を提示できなければどうなるのか。弱肉強食のヨーロッパを舞台に、常日頃からレベルの高い戦いを積み重ねている選手たちのなかに、マンネリ感が生じても決して不思議ではない。
 代表のほとんどをヨーロッパ組が占めている状況で、今後も指揮官の現地視察が増える。反町技術委員長は視察だけにとどまる必要もないと強調した。
「長いスパンで選手たちを視察するなかで、例えば週中でクラブを訪れて、どのようなトレーニングをしているのか、というアプローチで勉強してもいいと思っている」
 第二次森保政権の初陣は来年3月23日。対戦相手は未定だが、国立競技場で国際親善試合に臨む日程が決まっている。理想の組閣を目指しながら、指揮官が自らを世界目線でアップデートさせられる第一歩を踏み出せるかどうか。与えられた時間は決して長くはない。
(文責・藤江直人/スポーツライター)

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