3年ぶりのV奪還を目指した早大だったが帝京大に歴史的な大敗を喫した(写真:松尾/アフロスポーツ)
3年ぶりのV奪還を目指した早大だったが帝京大に歴史的な大敗を喫した(写真:松尾/アフロスポーツ)

なぜ早大ラグビーは帝京大に歴史的大敗を喫したのか?

 早大では、スポーツ推薦組やグループ校で結果を出した選手はごく一部だ。浪人生を含む一般入試組が多くを占める。相良はいざ最上級生になって様々な部員に接すると、自身を含めたレギュラー組の常識が皆の常識とは必ずしも一致しない現実に気づいた。
 心が晴れたのは、自身が怪我でグラウンドを離れた12月頃だ。
 インサイドセンターの吉村紘副将の尽力もあってか、あまり強い発言をしないタイプの選手が周りを奮起したり、互いに助け合ったりするような声を発するようになっていた。
 相良も進歩した。選手に意識して欲しいポイントがあれば、ただ伝えるだけでなく、それぞれに質問、し主体性を引き出す形を定着させようとした。
 それでも頂点まであと1歩で大敗を喫した。

 帝京大には確たる積み上げがあった。
 肉体強化と医療のシステムは盤石。世代有数の綺羅星が集められ、最長で4時間とも言われる練習に取り組んでいる。かくして相良の指摘するような「自信」をつける。
 これらハード面やチーム文化は、来季も継続される。レギュラー選手も多くが残る。2017年度までに9連覇を成し遂げた岩出雅之監督は昨季限りで退任も、相馬朋和新監督の長期政権が叶うよう逐一、助言を授けている。
 ライバル校にとっては、帝京大に追いつき、追い越すのは難しそうだ。その状況で、過去最多16度の日本一を誇る早大は、来季雪辱を期す。結果を出すには何が必要か。
 相良は「僕は(主将としては)優勝できなかったので、何がいい方法なのかはわからないですけど…」としつつ言った。
「皆が主将の言うことをよく聞いて、自分事にして、毎日、取り組めたら、自ずと全ての質が上がって、すぐレベルアップできると思います」
 大田尾監督は、すでに来季を見据えていた。
「アタックか、ディフェンスかのどちらかに、ものすごく極端に練習(の分量を)を振る。そういう何かを仕掛けないといけないかな、とは思います」
 1年時から主戦級の佐藤は試合後、帝京大が大喜びする姿を目に焼き付けたという。
 涙声で言った。
「来年は、あれを僕らがやります。逆に帝京大に、悔しい思いをさせてやりたい」
 早大がチャンピオン奪還を目指す新たな旅が始まる。
 (文責・向風見也/ラグビーライター)

関連記事一覧