3年ぶりのV奪還を目指した早大だったが帝京大に歴史的な大敗を喫した(写真:松尾/アフロスポーツ)
3年ぶりのV奪還を目指した早大だったが帝京大に歴史的な大敗を喫した(写真:松尾/アフロスポーツ)

なぜ早大ラグビーは帝京大に歴史的大敗を喫したのか?

 ラグビーの全国大学選手権の決勝が8日、東京の国立競技場で行われ、帝京大が早大を73-20の大差で下し、2年連続11度目の優勝を飾った。3年ぶりの優勝を狙った早大は、2年前の天理大戦の記録を更新する決勝戦のワースト失点となった。なぜ早大は帝京大に歯が立たなかったのか?

 前半17分には12ー7とリードも

 早大の相良昌彦主将は決戦前日、父で前監督の南海夫に言われた。
「明日は僅差で勝つか、大差でやられるかだな。もし後者になっても、ダサい姿は見せるなよ」
 果たして当日、11失トライ、73失点、53点差を喫した。いずれもこの大会の決勝のワースト記録を塗り替えた。
 ノーサイドの瞬間からグラウンドを去るまで、この日フランカーでフル出場の相良はどんな心境でいたか。
「どうだろう…。あまり、何も考えてなかったですね」
 父から「ダサい姿は見せるな」と告げられていたのだ。気落ちした様子を見せないよう努めたのではないか。
「それはあります。後輩たちにもダサい姿を見せないようにと」

 秋の関東大学対抗戦Aで17―49と敗れた帝京大に序盤は嚙みついた。
 7点差を追う前半11分だ。相手の反則と落球により、敵陣22メートルライン付近右でスクラムを得た。その後の攻めでは防御の薄くなりがちな箇所にスピードランナーを走らせた。帝京大の隙を突き、7―7と同点に追いついた。
 続く17分にも帝京大のペナルティから敵陣の深い位置でチャンスをもらった。用意された連係で数的優位を作り、右から左へボールを繋いだ。12-7と勝ち越しに成功した。
 その後も鋭い出足のキックチャージ、タックルでスタンドを沸かせた。
 しかし、相良は現実を見ていた。
 「(帝京大は)焦ってはいない。全てのプレーに絶対的な自信を持っているチームなので」
 
 早大がキックの蹴り合いで陣地を奪おうにも、ひとたび帝京大の望む位置で捕球されればキレのあるカウンターアタック、縦突進の合わせ技を浴びて自陣に押し込まれた。
 自分たちが攻めに転じても強力なタックルに跳ね返された。
 帝京大は先発の平均体重では2.6キロほど上回る。1対1に秀でていた。8対8で組み合うスクラムでも早大は圧力を受けた。
 最前列に入った2年生フッカーの佐藤健次は「低くいいスクラムを組める時もあった」と言う。
 フォワード8名の力を小さく結集させる、日本代表に近い形で安定を図っていた。
 それでも要所では帝京大の2、3列目の馬力に屈した。
 22分に12―14と逆転され、27分に12―21とリードを広げられたきっかけは、中盤でのスクラムを崩してペナルティを取られたことだった。
 以後も度重なる波状攻撃を浴び、次第にラグビーの残酷さが垣間見えた。コンタクトで苦しむ側は、ワンプレーごとに削られるエネルギーが大きくなる。その影響か早大は、1対1で何度も前に出られた。いくつかの得点機もミスでふいにした。

 

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