3年ぶりのV奪還を目指した早大だったが帝京大に歴史的な大敗を喫した(写真:松尾/アフロスポーツ)
3年ぶりのV奪還を目指した早大だったが帝京大に歴史的な大敗を喫した(写真:松尾/アフロスポーツ)

なぜ早大ラグビーは帝京大に歴史的大敗を喫したのか?

 就任2年目の大田尾竜彦監督は、打ちのめされた80分間を看破した。
「今年は我々もフィジカルのベースアップをして、去年よりは戦えるようになったんです。ただ、それに加えて鋭い動きがプラスアルファされないといけなかった。ディフェンスでボールを獲り返せる人間がいても、その彼らがコンテストできる(地上で球の争奪に移れる)ような、相手を早く倒すタックルが少なかったなと」
 在籍したヤマハで名司令塔と謳われた大田尾は、前年度の経験を活かして決勝にのぼりつめていた。

 ファーストシーズンを大学選手権の準々決勝進出までで終えると、「優勝するチームは秋から伸びる」。自軍の完成度を高めるのが早すぎたと反省し、今季は晩秋までセットプレー、接点と、最後に長所としたいパーツを段階的に磨いてきた。対抗戦は8チーム中3位。そこから敵陣22メートルエリアに入ってからの攻撃戦術に手を入れた。かくして選手権の準々決勝では、対抗戦で負けた明大を下した。
 桐蔭学園高の主将時代に全国大会2連覇を達成していた佐藤は、今季、下級生ながらリーダーシップを取るように意識した。フォワード陣のプレーに納得できなかったためだ。
 周りに厳しく要求し、底上げを図ったが、あちこちに目を向けることで自らの調子を落としてしまった。一時はコンディションも崩した。
苦境を脱したのは、上級生の存在があったから。
 試合のメンバーに絡まない4年生が練習試合で気迫を込めていたのを見て、刺激を受けた。何より故障で戦列を離れていた鏡鈴之介副将に、グラウンドに立つ心持ちについて、こう告げられた。
「健次は健次らしく、楽しんでプレーしたらいいんじゃないか」
 ファイナルの舞台で、佐藤は厳しい時間帯も表情豊かに戦っていた。ミスがあっても笑顔で切り替え、身体を張った。
「4年生、上級生のすごさがわかった。来年は下級生が自由にのびのびとプレーできる環境づくりを、僕たち(来季の)上級生がする」 

 すべてを終えると相良が取材エリアに表れた。
 思い返すのは自身の主将生活。特に脳裏に浮かぶのは、シーズン中盤まで続いた苦悩の季節だった。
 系属の早稲田実業高でも主将を務めた相良は、大学の覇権奪還のため「練習の質を上げたい」と意識した。
 日々のトレーニング動画を振り返り、翌日以降の検討課題を事細かにミーティングで落とし込むまではよかったが、その内容を受け取る選手の吸収力、理解度にばらつきがあった。
「聞き流してしまう選手もいて…」

 

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