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エンゼルスの球団売却の撤回で大谷翔平の退団が濃厚に。トレードの可能性も出てきた(写真・AP/アフロ)
エンゼルスの球団売却の撤回で大谷翔平の退団が濃厚に。トレードの可能性も出てきた(写真・AP/アフロ)

なぜエンゼルスの球団売却撤回で大谷翔平の移籍説が濃厚となっているのか…騒動の波紋と今後の行方を検証した

 

 なぜこの時期なのか? 1月23日、エンゼルスのアート・モレノオーナー(76)が、昨年8月に手続きを開始していた球団売却を撤回した。
 モレノ氏は、「やり残したことがある」と声明で綴ったが、オファーが想定よりも低かった。それは、エンゼルスの放映権を持つバリー・スポーツの親会社であるダイヤモンド・スポーツ・グループが破産の危機にあり、その影響ではないかとの憶測が飛び交う。売却額を下げると他の球団価値も下がるので、大リーグ機構から売却が承認されない可能性があり、売りたくても売れなかった、という指摘さえ耳にする。それは大谷翔平(28)が、もはや相場より低い年俸では契約できないという状況と似ているが、それは後述するとして、なぜいまなのか? と訝しがる声が収まらない。

 今オフは積極的に補強に動いたが大物は獲得できず

 

 エンゼルスはこのオフ、積極的に動き、昨年11月15日ドジャースからFAになった先発のタイラー・アンダーソンと3年総額3900万ドル(約50億円)で契約。3日後には、ツインズから内野手のジオバニー・ウルシェラをトレードで獲得した。さらに11月23日には、ブルワーズとのトレードで外野手のハンター・レンフローを加えるなど序盤はストーブリーグの話題をさらっている。ところが12月に入り、大物選手の契約が決まり始めると、動きが止まった。

 売却過程にあるチームは、長期高額契約の承認プロセスが複雑。資産価値が変わるため、現オーナーに加え、買収に手を挙げているグループとの調整が必要だからだ。そのややこしさは、このオフに交わした最大の契約総額が、アンダーソンとの3900万ドルというところにも透ける。
 もしも、11月中に撤回していれば、エンゼルスに必要な戦力――先発1~2番手と、遊撃手の大物獲得に動くことも可能だった。奇しくも、先発陣では、ジャスティン・バーランダー、カルロス・ロドン、ジェイコブ・デグロム、遊撃手では、トレイ・ターナー、ザンダー・ボガーツ、カルロス・コレア、ダンスビー・スワンソンらオールスタークラスがFAだった。
 もちろんモレノ氏が「ぜいたく税を払っても構わないから、積極的に」と、その時点で方針を転換してくれないと叶わぬ話だが、肝心なときにエンゼルスは指を加えてみているしかなかった。もはや、この時期になって、「資金を惜しむな。補強しろ」と号令をかけたところで手遅れ。そもそも、その可能性は低く、それぐらい熱意があるならいまのようなチームにはなっていない。

 さてこれで、大谷を引き留めることは難しくなった、というのが大方の見方だ。彼が再契約するとしたら、仮にエンゼルスがプレーオフに進めなくても、チームが正しい方向に進んでいるかどうか、そういう手応えを得られるかどうかが、判断を左右すると見られている。
 それは新オーナーに託された最初の仕事でもあったが、再建を望んだファンの期待は、モレノ氏の売却撤回でしぼんだ。
 モレノ氏は、ジョシュ・ハミルトン、アルバート・プホルス、アンソニー・レンドンらのときと同様、自らが交渉に関わり、他が撤退するような史上最高額で引き留めようとするかもしれないが、それはかえって逆効果ではないか。過去の例を見ても、モレノ氏は長期高額契約に躊躇しない。しかし、ぜいたく税を払わない、というスタンスもブレないので、他にしわ寄せがいく。

 

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