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エンゼルスの球団売却の撤回で大谷翔平の退団が濃厚に。トレードの可能性も出てきた(写真・AP/アフロ)
エンゼルスの球団売却の撤回で大谷翔平の退団が濃厚に。トレードの可能性も出てきた(写真・AP/アフロ)

なぜエンゼルスの球団売却撤回で大谷翔平の移籍説が濃厚となっているのか…騒動の波紋と今後の行方を検証した

 仮に10年総額、5億ドル(約650億円)で契約するとする。年俸は5000万ドル(約65億円)。その場合、2026年まではマイク・トラウト、レンドン、大谷の3人でチーム年俸総額の半分を占めることになる。
 一部の選手に偏るいびつな年俸構成の弊害は長くエンゼルスを苦しめてきたが、同じことが繰り返される。せめてレンドンをトレードし、負担を半分にでも減らせればよかったが、レンドンはモレノ氏案件であり、それもできなくなった。補強だけでなく、リーグ最低といわれるマイナーリーガーの待遇、削りに削られ、すかすかになった中南米スカウティングの予算も改善が求められているが、それも後回しとなる。そんな現状を感じれば、大谷は自ら身を引くことを選択するかもしれない。

 もちろん、史上最高額を引き出したとして、代理人は小躍りするだろう。大谷の代理人を務める「CAAスポーツ」は、大谷と破綻した暗号資産の交換業大手、FTXトレーディングを結びつけた失態をなんとかカバーしたい。が、そこで焦り無理に契約を促せば、「CAAスポーツ」と大谷の関係も微妙なものとなりうる。
 かといって、大谷が相場以下で契約することは、もはや彼の意志では難しい。球団の売却価格と同じで、リーグトップの選手が市場価値よりも低い額で契約を結べば、他の選手の契約にも影響するため、選手会が口を挟みかねない。全体の待遇を引き上げるためにも大谷は妥協できない。そこでは大谷もジレンマを感じるのではないか。

 大谷と契約しても、他の補強に影響を与えないよう、年俸総額にぜいたく税を払わないような上限を設けることを撤廃するなら再契約の可能性は高まるが、モレノ氏はそれを受け入れられるのか。加えて最低といわれる育成システムの改善にも投資し、チームが再建の明確な道筋を描けるのか。
 そこに確信が得られなければやはり、大谷の選択肢は移籍に大きく傾くのではないか。再契約の見込みがないと感じれば、エンゼルスは7月のトレード期限までに大谷をトレードするしかないが、その場合、ファンは大谷に同情し、モレノ氏はさらに多くのファンを敵に回すことになる。
(文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)

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