井岡一翔はWBO王座を返上してドロー判定に終わっていたWBA王者のフランコ(左)との再戦を選択(写真・山口裕朗)
井岡一翔はWBO王座を返上してドロー判定に終わっていたWBA王者のフランコ(左)との再戦を選択(写真・山口裕朗)

井岡一翔がWBO世界王座を返上しWBA王者フランコと再戦へ

 プロボクシングのWBO世界スーパーフライ級王者の井岡一翔(33、志成)が興行権の入札となった同級1位の中谷潤人(25、M.T)との指名試合を行わずに同王座を返上、大晦日決戦でドローに終わったWBA世界同級王者のジョシュア・フランコ(27、米国)との再戦の方向で交渉を進めていることが14日、明らかになった。井岡とフランコの試合は、一部で採点に対して疑念の声が出てフランコ陣営も再戦を熱望していた。井岡は王座を返上し無冠になるが退路を断ってまで完全決着を望んだもの。WBA王座を獲得し悲願のWBC世界同級王者ファン・フランシスコ・エストラーダ(32、メキシコ)との統一戦を実現したい考え。またWBO王座が返上された場合、王座決定戦が行われ、中谷に優先出場資格があり、対戦相手としてフランコと3度対戦している元WBA世界同級王者で2位のアンドリュー・モロニ―(32、豪州)か、3位の元3階級制覇王者、田中恒成(27、畑中)が有力候補となっている。

 判定に疑念の声が出たフランコと完全決着

 

 退路を断つ苦渋の選択だった。
 WBOは、井岡陣営と指名挑戦権を持つ前WBO世界フライ級王者の中谷の両陣営に1月9日付で30日以内を期限とする対戦交渉を指令していた。だが、期限を過ぎても合意に達しなかったため興行権の入札が決定。井岡陣営は指名試合を行わずに同王座を返上する意向を固めた。
 大晦日にWBA世界同級王者のフランコと統一戦を戦った井岡は、この試合の勝者が、180日以内に中谷と指名試合を行わねばならないことについて「チャンピオンとして挑戦者を迎え撃つのは当たり前のこと。それが誰であろうと中谷選手であろうとチャンピオンとしての義務」と話していた。
 試合会場には、井岡が現役復帰した際の対戦目標に掲げていたWBC世界同級王者のエストラーダが来場。フランコに勝って2団体を統一した後に中谷の指名挑戦を受け、今年の大晦日にもエストラーダと3団体統一を行うプランを描いていた。
 だが、フランコとの試合は判定決着となり、1人が「115-113」でフランコ、2人が「114-114」とつける0-1のまさかのマジョリティードローに終わり、WBO王座は防衛したが描いていたプランは崩れた。
 それでもエストラーダ陣営と井岡陣営は下交渉を行い、エストラーダ陣営からは「場所は日本でも米国でもメキシコでもどこでもいい。すべて条件次第(ファイトマネー)で受けたい」と対戦を承諾した上で具体的な提案まであったという。
 ただエストラーダには次戦の防衛計画があり、井岡も中谷との指名試合をWBOから命じられていたため、このビッグマッチを実現するには、互いに1試合防衛戦をクリアする必要があった。
 井岡陣営は、中谷との指名試合の交渉に入る方向でいたが、フランコ戦の判定が物議を醸した。
 米の権威ある専門誌「リング誌」が「フランコの勝利につけたジャッジのスコアカード(115―113)は試合を通して攻撃者となり特に前半多数のラウンドで井岡を上回っているように見えたフランコに傾いた」との見解を伝えるなど、一部のファンの間からもドロー判定への異論を唱える声が噴出した。手数と攻勢点でフランコが上回っていたのではないか?という見解だ。
 フランコ陣営も、試合後の会見では「ここは井岡のホーム。残念だが、判定結果は受け入れる」とコメントしていたが、実際は、12ラウンドを井岡に「10―9」とつけて結果ドローにしたジャッジに対して「おかしいだろう」と現場で猛抗議する場面があり、判定結果には不満を抱いていた。
 名トレーナーとして知られるロバート・ガルシア氏は、「我々が望み、得るだけのものがあったと思う結果ではなかった。偉大なる王者の井岡には尊敬以外何もない。すぐに再戦し、またファンに素晴らしい戦いを提供できるよう望んでいる」とツイート。再戦を熱望していた。フランコの地元であるサンアントニオの「サンアントニオエクスプレスニュース」は「すでに再戦の可能性について話し合いがあった」と報道していた。

 

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