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トランスジェンダー男子ボクサーの真道ゴー(右)が願っていたプロテスト受験は却下されたが、準公式試合は認められた。左は本石会長(昨年の資料写真)
トランスジェンダー男子ボクサーの真道ゴー(右)が願っていたプロテスト受験は却下されたが、準公式試合は認められた。左は本石会長(昨年の資料写真)

プロボクシングJBCが策定した「トランス男子ルール」は大きな一歩なのか、多様性の時代に適応できていないのか…真道ゴーのプロテスト受験は見送ったが準公式試合は認め“門戸”は開く

 男子としてのプロテスト受験を申請したのが、昨年4月。日本プロボクシング協会の理事5人にスパーリングをチェックしてもらい「十分に男子プロとしてできる」とのお墨付きをもらい、協会からもプロテスト受験とライセンス交付を求める嘆願書が出されていた。だが、その時期のJBCは財政が破綻して、財団法人が解散となり、プロテストやライセンス承認などの新規事業は行えなかった。また当時のJBCの運営組織は、あまりにも杜撰で、第1次の諮問委員会は、理事会の承認も得ずに立ち上がっていて、ボクシング専門雑誌の記者がメンバーに加わるなど、答申を出すにはふさわしくない構成で、その後、JBCの体制が刷新されたと同時に諮問委員会のメンバーも再構成されるなどした。そういうJBCのドタバタに真道陣営が振り回され、無駄に時間が経過した。真道、本石会長が、今回の結論への経緯に困惑を覚えるのも当然だろう。
 今後、真道は、このトランス男子ルールを受け入れ、準公式試合に一歩踏み出すだろうか。本石会長は、こう代弁した。
「これを大きな1歩と受け止めて準公式試合を始める準備に入るのか。我々の求めたゴールとは違うので、もうあきらめるのか。すべては真道の決断を尊重したい。今は迷っている様子。ただ私は個人的には大きな一歩だと考えている。今まで何もなかったJBCルールにトランス男子ルールが書き加えられるわけですから。真道だけでなく、今後のトランスジェンダーに道筋は開いた」
 当初は8月6日に大阪の枚方で行われる興行で公開プロテストの準備をしていた。それを準公式試合の実施に切り替える考えはない。
「プロテストと試合に望むのでは気持ちの持ち方が違う。真道もそれに関してはやりたくないという考え」と本石会長。
 真道が、準公式試合に踏み出せない理由は、「年齢もあり、準公式試合をどれだけやれば、公式試合が認められるのかも見えないので真道が迷っていることは理解できる」(本石会長)とのこと。
 2017年に女子選手としては引退した真道は、当時から男子選手として復帰する夢を抱いており、一般女性と結婚後に授かった子供たちの後押しや児童を支援する福祉事業会社の経営者として「輝く姿を見せたい」との思いにかられ「イバラの道」への挑戦を決断した。
 国際的にジェンダーフリーが進んでいるが、今なお性同一性障害に思い悩む人たちが少なくなく「私も命を断とうとしたこともあった」という真道は、男子ボクサーとして「1勝すること」で社会的メッセージを伝えたいという。
「無謀と言われても、やってみたいことに挑戦する姿を見て、悩んでいる人や苦しい思いをしている人の勇気になれればありがたい」
 1年以上の時間が経過したという経緯もあって、納得がいかないかもしれないが、JBCルールに「トランス男子ルール」が加わったのは画期的なことだ。ルールを単なる“お飾り”で終わらせないためにも、まずは、準公式試合を行い一歩踏み出すことだろう。その先の道筋も閉ざされていないのだから「プロ1勝」の可能性を求めて挑戦することの意義は大きい。
 本石会長が言う。
「真道が言うんです。明日から練習はいきますからと」
 プロボクシング界のジェンダー問題の成り行きに注目したい。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)

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