• HOME
  • 記事
  • 格闘技
  • なぜ井上尚弥はタパレスをKOするのに手を焼いたのか…来年5月に東京ドームで“悪童”ネリとのビッグマッチ計画
10回KOで2階級4団体統一をやってのけた井上尚弥と弟の拓真、真吾トレーナー(写真・山口裕朗)
10回KOで2階級4団体統一をやってのけた井上尚弥と弟の拓真、真吾トレーナー(写真・山口裕朗)

なぜ井上尚弥はタパレスをKOするのに手を焼いたのか…来年5月に東京ドームで“悪童”ネリとのビッグマッチ計画

 次なるビッグマッチが待ち受けている。
 大橋会長は「いろんな選択肢がある」と言葉を濁したが、水面下で来年5月に東京ドームで「日本で最も嫌われているボクサー」であるネリとの防衛戦が計画されている。ネリは、元WBC世界バンタム級王者、山中慎介との2度にわたる因縁マッチで、ドーピング疑惑、体重超過と問題を繰り返して、日本の全ボクシングファンからブーイングを浴びた。そのネリを6年越しに、我らがモンスターが退治してくれるならば最高の舞台設定だ。
 ネリに、現在、JBCは無期限の出場停止処分を科しているが、“事件”から5年が経過し、スーパーバンタム級に上がってからは、体重超過を犯していないこともあり、JBCでは、正式な手順に従い停止処分の解除が申し立てられた場合は、門前払いにする考えはなく、ルールの壁がクリアされる可能性がある。WBCもネリを指名挑戦者として承認している。東京ドーム興行が実現すれば、1990年の当時の3団体ヘビー級統一王者のマイク・タイソン(米国)が、ジェームス“”バスター”ダグラス(米国)にKO負けした“世紀の番狂わせ”以来、34年ぶりのボクシングマッチとなり、京セラドームでは、元WBC世界バンタム級王者の辰吉丈一郎が世界戦を行ったことがあるが、東京ドームで日本人がメインを張るのは史上初となる。
 リング上で井上は、「来年5月に噂されている試合が実現するかはこれから交渉を詰めていくところですが、ファン(の方々)が喜んでくれる試合を実現させたい。どんどん声を上げてもらえればと」とネリ戦を念頭に置いたメッセージを伝えた。
 その先には“金満大国”サウジアラビアでの世界戦開催オファーもある。来日しているトップランク社のボブ・アラム氏が2日前に明かしたものだが、オイルマネーをバックに国家事業としてWBC世界ヘビー級王者のタイソン・フューリー(英国)対元UFCヘビー級王者のフランシス・ガヌー(カメルーン)の異色マッチを組むなど、次から次へとビッグマッチを実現させているサウジでの開催となれば、井上のファイトマネーが「ゼロがひとつ増え数十億円規模になる」可能性さえある。
 リング上で井上は「ここが適正階級。来年、再来年はここに留まる」との構想も明かした。井上はスーパーバンタム級で戦うべきボクサーとして、タパレス、ネリ、元WBAスーパー&IBF王者で16日に行われたWBAの挑戦者決定戦でTKO勝利したムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)、そしてバンタム級時代に一度、試合が決まっていたものの流れた元3階級制覇王者の“問題児”ジョンリエル・カシメロ(フィリピン)の4人の名前をあげていた。タパレスをかたづけて残りは3人。敗れたタパレスは「次なる井上の挑戦者へアドバイスはあるか?」と聞かれ、「グッドラック(幸運を祈るよ)」という言葉を残した。
 今のペースは、1年に2試合なので、2024年に2人を蹴散らし2025年に4人目を潰して、日本人初の5階級制覇となるフェザー級への挑戦へ舵を切るという青写真なのだろう。そのとき井上は32歳。脂が乗り切った円熟期と重なる。
 彼が口にしていた35歳引退説が延長される可能性さえ出てきていて、大橋会長と真吾トレーナーに「自分のパフォーマンス次第では、少し延長していいですか」と、立ち話で問いかけたというエピソードも会見の質疑で話題にもなった。いったいモンスターがどこまで進化を続けるのか想像もつかない。
 最後に。
 大橋会長は、この日が、来年2月24日に両国で元IBF世界スーパーフライ級王者の“強敵”ヘルウイン・アンカハス(フィリピン)と、自らのケガで延期となった初防衛戦を戦うWBA世界バンタム級王者の弟、拓真の28歳の誕生日だったことを明かし、「凄い誕生日プレゼント。弟思いの兄だと思った」と井上の優しい人格を称えた。井上を愛する人々への1日遅れのクリスマスプレゼントでもあった。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)

関連記事一覧