
「これが最後になるかもしれない」36歳の井岡一翔の壮絶な覚悟と戦う理由…不利の予想の中でWBA王者に舐めた態度を取られた元4階級制覇王者が胸に秘めた思いを明かす
プロボクシングの元4階級制覇王者の井岡一翔(36、志成)とWBA世界スーパーフライ級王者フェルナンド・マルティネス(33、アルゼンチン)の再戦(11日・大田区総合体育館)の調印式並びにグローブチェックが9日、渋谷のABEMAタワーで行われた。大晦日に予定されていた再戦ではマルティネスはインフルエンザに罹患し、調印式に出席できていなかったが、今回は無事にサインを済ませた。ブックメーカーのオッズは、1対3で井岡が不利で、ABEMAの番宣番組でも元世界王者が不利予想を口にしているが、井岡は「それを覆してリベンジする」と宣言した。前夜には、異例のTikTokライブを敢行した。そこには36歳の井岡が今なお戦い続ける理由と壮絶な覚悟が秘められていた。

マルティネスは大きなサングラスにマスクという完全防備で、交通渋滞にひっかかって約3分ほど遅れて会見場に到着した。大晦日の再戦はインフルエンザ罹患でドタキャン、調印式にも現れなかったが、この日は、ファンにもらったというドラゴンボールのフィギュアを持って陽気に登場した。一方の井岡は会見場に入ってきたときから、一度もマルティネスと目をあわさなかった。6日に来日した参謀のイスマエル・サラストレーナーと並んで着席した。
王者は大晦日のドタキャンを「申し訳なかった」と謝罪はしたが、「井岡選手をアルゼンチンにご招待したい。ステーキ、エンパナーダ、レンテハスをごちそうしたい」と、試合も終わっていないのに唐突に井岡のアルゼンチンへの招待を口にした。ちなみにエンパナーダはアルゼンチンを代表する料理でミートパイのようなもので、レンテハスは、豆料理。
2人は前戦から特別な親交を深めたわけではない。なんでそんなことを?と疑問に思った記者が聞くと「アルゼンチン人がグルメだということをお知らせしたい」と理解不能な返答をした。会見場は苦笑で包まれたが、井岡はピクリとも表情を変えなかった。
「前回は調印式からできなかった。無事に終われて安心、嬉しく思っています。久しぶりに対面して元気そうでよかった」
ただ大晦日には中止となっていた調印式が行われたことに安堵していた。
謎のグルメ招待の理由はハッキリしている。昨年7月7日の第1戦で3-0判定勝利で下した井岡を舐めているのだ。
戦前の予想としては井岡不利の声がほとんどである。
今回の再戦を独占無料ライブ配信するABEMAの番宣のYoutubeチャンネルでは、元WBA世界スーパーフェザー級、元同ライト級王者の畑山隆則氏が「あれだけ力の差があると井岡有利の発想はできないし、井岡不利は否めない」と予想し、IBF世界フライ級王者の矢吹正道も「2-1判定でマルティネス」と井岡の僅差判定負けを予想した。
ブックメーカーのオッズも顕著で、英大手「ウイリアムヒル」はマルティネス勝利が1.3倍で.井岡勝利が3.5倍で、約1対3で王者有利。さらにマルティネスの判定勝利は1.67倍、KO&TKO勝利が4.33倍、井岡の判定勝利が5.5倍、KO&TKO勝利が9倍で、判定決着で王者が井岡を返り討ちにするものと予想している。
ちなみにドローは15倍。
それらの下馬評が王者をこういう舐めた態度にさせているのだろう。
「人々は私のポテンシャルを見てそう予想しているのだと思う。インフルエンザで15日休んだだけで、ずっとトレーニングに時間を費やしてきた。調子は最高にいい」
マルティネスは、自信満々である。
「戦争だ。前回と同じような試合をしたい。新王者と旧王者の戦い。KO決着となれば、なおさらファンを喜ばせると思う」