
衝撃の“新怪物”!“神の左”を継承する増田陸は87秒“ワンパンKO”で那須川天心よりもインパクトを残した…狙うは「WBA堤聖也へのリベンジと中谷潤人が持つWBCのベルト」
増田のキャリア唯一の1敗はプロ4戦目で2023年8月に井上尚弥4団体統一記念杯バンタム級モンスタートーナメントの準決勝で日本王者の堤に挑み、0-3判定負けしたもの。堤を左で流血させ、5回に公開された途中採点ではリードしていたものの、堤の粘りの前に逆転された。その後、堤はトーナメントで優勝して、世界への挑戦権を得て、井上拓真(大橋)からWBAのベルトを奪っている。あの1戦が2人の運命の分けれ目になったわけだが、増田はそこから再起して、日本王座を奪い、そして世界挑戦の資格を得るところまでのぼりつめてきた。
増田が、堤に世界の舞台でリベンジに挑むのはストーリーとして面白い。
自信のほどを聞くと「やってみないとわからない。勝つための努力をする自信があります」と、芯のあるコメントを返してきた。
ただ堤は目の手術で休養王者となり、7月には横浜で正規王者の昇格したバルガスに堤と引き分けた比嘉大吾(志成)が挑戦することになっていて、その勝者と11月に堤が王座統一戦を行うため、増田にチャンスが巡ってくるとすれば、来年以降になるだろう。
WBOは、王者の武居由樹(大橋)が9月14日にクリスチャン・メディナ(メキシコ)との指名試合が予定されている。中谷がWBCとIBFの王座を返上することが濃厚だが、王座決定戦となると、上位ランカーに出場資格が与えられるため、増田にはまだ挑戦機会はない。
それでも来年には世界の舞台にあがってくる。ハードパンチャーにありがちな、1本調子のボクシングに幅をつけてディフェンス能力を高めるには、まだ時間があった方がいいだろう。
出身は、強豪とは言えない2部の立教大。エリートとは言えないコースから、実力で這い上がってきた異質のKOパンチャーこそ、本物のネクストモンスターだと筆者はにらんでいる。
今回の計量後の勝負飯は、北海道から取り寄せた蝦夷鹿だった。自分でステーキとしゃぶしゃぶに料理した。「野性味につなげるジビエパワー」。そんな話をしていた。
ジビエパワーが秒殺KOにつながったの?
そう聞くと、言葉数は少なく、修行僧のように険しい顔をした男が、「力がみなぎるものがありました。今からもう1試合できますよ」と、優しくふっと笑った。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)