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オレゴン世界陸上の4×100mリレーで2走・鈴木涼太(左)と3走・上山紘輝(右)の間でバトンミスが起き、失格で予選敗退となった(写真:長田洋平/アフロスポーツ)
オレゴン世界陸上の4×100mリレーで2走・鈴木涼太(左)と3走・上山紘輝(右)の間でバトンミスが起き、失格で予選敗退となった(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

なぜ世陸4×100mリレーで東京五輪に続きバトンミス”失格”が起きたのか…お家芸復活に求められるものとは?

2015年の北京世界陸上は大瀬戸一馬、藤光謙司、長田拓也、谷口耕太郎のメンバーで出場。予選1組で4着(38秒60)に終わり、決勝進出を逃している。大瀬戸、長田、谷口は当時20~21歳で、個人種目の出場はなかった。今回は北京大会と同じようなチーム状況だったといえるだろう。

 反対に近年、日本勢が世界大会でメダルを獲得したのは以下の3大会だ。2016年のリオ五輪(山縣、飯塚翔太、桐生、ケンブリッジ飛鳥)は37秒60のアジア新(当時)で銀メダル、2017年のロンドン世界陸上(多田、飯塚、桐生、藤光)は38秒04で銅メダル、2019年のドーハ世界陸上(多田、白石、桐生、サニブラウン)は37秒43のアジア新で銅メダルだった。

 このうちロンドン世界陸上とドーハ世界陸上は予選と決勝でメンバーが一部異なる。ロンドン大会では調子の上がらなかったケンブリッジ飛鳥を外して、アンカーに藤光を起用。ドーハ大会では1走を小池から多田に変更している。選手層が厚く、リザーブに世界大会の経験者がいたことで、不調の選手がいても十分にカバーできた。

 今大会も経験豊富な山縣、桐生、多田のうち1人でもリレーメンバーに入っていれば状況は変わっていたのかもしれない。また今回の4人は世界陸上未経験者で、主力メンバーの離脱もあったため、バトンパスの精度が欠けていた部分があったように思う。

 一方、他の強豪国は全体的にバトンパスがうまくなっている印象だ。

 今後、世界大会で日本がメダルを獲得するにはバトンパスの精度を高めていく必要があるだろう。そうなるとネックになるのがサニブラウンの存在だ。米国を拠点にするサニブラウンは男子短距離リレー合宿に参加するのは難しく、今大会前の合宿にも帯同していない。まずはサニブラウン以外の部分をしっかりと固めておくことがポイントになるのではないだろうか。個人的には、サニブラウンはバトンをもらうだけの4走に固定するかたちがいいように感じている。

 日本代表の高平慎士コーチはサニブラウンのリレー欠場について、「予選をストレスかけずに通るとか、準決勝も余裕をもって着順で通れるくらいのステップアップが必要。次回以降は100m3本だけでなく(リレーでも)日の丸つけて走ってほしいですね」と話していた。

 今後は23歳のハーフスプリンターが日本の〝エース〟になっていくはずで、個人種目(100mと200m)でメダルを目指すようだと負担はかなり大きくなる。

 今回、米国は100mと200mでワン・ツー・スリーを達成したが、4×100mリレーの予選ではメダリスト6人中3人しか起用していない。予選はサニブラウン抜きのメンバーで臨み、決勝でエースを投入するようなかたちがベストではないだろうか。

 そうなると4人が速ければいいわけではなく、突発的なアクシデントも考えておくと、リレーメンバー6人全員が高い走力とバトンスキルを備えておくことが重要になる。  パリ五輪の翌年(2025年)には東京で世界陸上が開催される。東京五輪で届かなかった悲願の〝金メダル〟に向けて、日本チームの再浮上を期待せずにはいられない。

(文責・酒井政人/スポーツライター)

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