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前代未聞の”職場放棄”をしたキャディーの大江順一氏(右)と思わず泣きだした大西葵プロ(左)。先週のサントリーレディスオープンでは息ピッタリだったのだが…(資料写真・日刊スポーツ/アフロ)
前代未聞の”職場放棄”をしたキャディーの大江順一氏(右)と思わず泣きだした大西葵プロ(左)。先週のサントリーレディスオープンでは息ピッタリだったのだが…(資料写真・日刊スポーツ/アフロ)

なぜ前代未聞のキャディー”職場放棄騒動”が起きたのか…トラブルメーカーの”過去”と女子ツアーの特殊事情

 藤田光里の専属キャディーを務めていた2015年5月の「中京テレビ・ブリヂストンレディス」では、プロアマ戦で藤田と口論となり、ゲストが乗るカートに足を投げ出して座るなど業務を放棄。ゲストからのクレームにJLPGAは12日間の職務停止を科し、藤田は注意処分とした。

 藤田のバッグを担いだ時期には、不機嫌になるとクラブの受け渡しを拒否することもしばしばだった。会話は一切なし。藤田のプレー中には背を向けるなどの“放置プレー”は有名で、藤田のファンらギャラリーとのトラブルもあった。

 ツアー規則の中には「帯同キャディー規則」の項目があり、「キャディーはいかなる時でもエチケットとマナーを守り、他のプレーヤーに対しても心くばりを忘れず、スポーツマンシップに違反するような言動をしてはならない」と明記されている。

 JLPGAがキャディーとして適切ではないと判断した場合は罰則を科すことができ、7年前の職務停止もこの規則に基づく処分だった。

 ただ、同規則には「キャディーに関する一切の責任は、当該キャディーを帯同した選手が負う」とも記されている。

 両者の“主従関係”でいえば、契約して業務の対価として金銭を支払っている選手が「主」で、金銭を受け取るキャディーは「従」。キャディーが起こした問題の責任を雇い主である選手が負うのは当然だが、女子ツアーでは、その関係が、しばしば逆転するという特殊な環境がある。  特にプロとしての経験が浅い若手が陥りやすく、藤田のようにいつの間にか、キャディーの“支配下”に置かれた選手が、以前から何人もいるのが実情だ。キャディーが現場コーチ役になったという見方もできるが、その逆転した主従関係の度が過ぎると、一種のハラスメントに抵触する行為に発展するケースもなくはない。だが、今回の騒動のように試合中に職場放棄するのは超レアケースである。

 2015年の藤田のツアー初優勝時にバッグを担いだ大江キャディーは、「初V請負キャディー」として週刊誌に取り上げられたことがあるが、その記事の中で、「自分は競馬の武豊さんのようになりたい」と発言した。キャディーが騎手で、女子選手が馬。馬の能力を引き出し操るスペシャリストになりたいとの願望を比喩したものだが、女子選手を馬に見立てた発言が問題視され、物議を醸したこともあった。女子選手とキャディーの特殊事情ではなく、大江という人物の資質に問題があったと言わざるを得ない。  ただ、大西と大江キャディーは、これまで何度もコンビを組んでおり、今回の騒動では、キャディーとしての資質に欠ける人物にバッグを預けた大西にもそもそもの問題があると指摘する意見もある。  確かにトラブルメーカーといえるキャディーを雇った責任は大西にあるが、仕事を投げ出し、同伴競技者にも迷惑をかけた大江キャディーの罪が免責されるはずもない。

 

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