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アマ13冠の堤駿斗がデビュー戦で東洋太平洋ランカーのフィリピン人に“準完全”の判定勝利(写真・山口裕朗)
アマ13冠の堤駿斗がデビュー戦で東洋太平洋ランカーのフィリピン人に“準完全”の判定勝利(写真・山口裕朗)

判定勝利デビューした“アマ最高傑作“堤駿斗は本当に“ネクスト・モンスター”級の逸材なのか?

何度か堤とスパーリングした経験のある井上尚弥は、「距離感が素晴らしい」と堤を称えていた。井上尚弥の父である真吾トレーナーも「間合いの作り方がいい。加えて、スピード、パワー、当て勘、ディフェンス力とボクサーに必要なものが揃っている。プロでどう成長していくかが楽しみ」という話をしていたが、まさにその距離感をデビュー戦でまざまざと見せてくれたのである。

 プロでやれる自信はつかめたのか?  そう聞くと堤は、「はい。前の手のジャブと距離感ですね。プロでもランカー相手に通用するなと」と、そこに自信は深めていた。

 実は、井上尚弥が、デビュー時にプロを震撼させたのが、そのステップバックの能力だった。現在は、近大ボクシング部監督で元WBA世界スーパーフライ級王者の名城信男氏が、若き日の井上とスパーを経験した際に「パンチ力はもちろんだけどステップバックが凄い」と、その足の動きに注目していたことを覚えている。堤と井上尚弥との共通点。そのベースこそが、“ネクスト・モンスター”としての片鱗である。

 目標はもちろん世界王者である。

 層の厚いフェザー級での世界戦実現は簡単ではなく、2年、10戦以内という目標を立てている。

「10戦のなかで、どれだけ成長できるか。チームからGOサインが出るまで経験を積まないといけない。国内、東洋太平洋のタイトルを取るまで成長する必要がある。目の前の戦いをひとつひとつ勝ち抜き、プロでの倒し方だったり、戦い方を確立させて、ひとつひとつ階段を上りたい。必ず世界を取るためにプロの世界に来た。そこを見据えて、1日、1日、もっともっと修行して強くなりたい」

 陣営では、当初、秋、大晦日と2試合消化させたい意向を持っていたが、痛めた拳の回復を考えると、次戦は、井岡が統一戦を狙う大晦日のリングとなる可能性が高い。

「年内には、もう1試合やりたい。それまでにもっともっと強くなって、もっと長いラウンドのスパーのなかで倒せる場面を練習したい」

  前日は23歳の誕生日だった。

 Amazonで好きなケーキをお取り寄せしたが、「試合が終わって家に帰ってから食べる」と冷凍保存して手をつけなかった。1日遅れのバースデーケーキの味は、ホロ苦かったか甘かったか。ただ悲観する必要は何もない。弱い相手を選ぶのは、ナンセンスではあるが、自ら2人の候補者のうち映像を見て選択したこのジェミノは、マッチメイクミスだった。相手次第ではKOデビューはあり得ただろう。

 最後に。

 堤がタダモノではないと感じたシーンがあったので書いておきたい。 3ラウンド。序盤は様子を見ていたジェミノがプレスをかけて前に出てきたのだが、堤は臆することなくインファイトで迎え打ち、頭をつけて殴り合った。そして、彼はニヤっと笑ったのだ。

「アマ時代からのクセ。打ち合うぞの意思表示。そして何より楽しかったんです」

 その狂気こそ、大物の条件――。

(文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)

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