箱根駅伝の100回記念大会では全国の大学に門戸が開かれることになった(資料写真・日刊スポーツ/アフロ)
箱根駅伝の100回記念大会では全国の大学に門戸が開かれることになった(資料写真・日刊スポーツ/アフロ)

箱根駅伝予選会の「全国化」で何がどう変わる?…甘くない現実と大いなる可能性

 

関東学生陸上競技連盟が第100回東京箱根間往復大学駅伝(2024年1月2日、3日)の予選会に、全国の大学が参加可能となったと発表した。参加資格を「関東学生陸上競技連盟男子登録者」から「日本学生陸上競技連合男子登録者」に拡大したためだ。第101回大会以降の開催方法は検討するとしているが、関東ローカルの大会だった箱根駅伝が「全国化」することになる。

 この決定は地方大学にとって〝夢への扉〟のように見えるかもしれない。しかし、現実は違う。来秋の予選会を地方大学が突破するイメージがまったく浮かばないからだ。

 突然のチャンス到来に地方大学の指揮官たちも戸惑いを隠せない。11月の全日本大学駅伝で4年連続12度目の出場となる関学大・竹原純一監督はスポーツ紙の取材に対して、「今のメンバーで出るのは無理。箱根はもともと頭にないし、ハーフの練習もしていないしね」と答えている。

 まずは関東と地方では大きな実力差がある。昨年の全日本大学駅伝は関東勢が15位までを占めた。関東地区以外の最上位は16位の関学大で15位の日体大(エース藤本珠輝を外した布陣)とは3分03秒差。14位の拓大(箱根駅伝予選会を次点で敗退)とは8分30秒という大差がついた。これは優勝した駒大と13位に沈んだ帝京大のタイム差以上(6分53秒差)の開きになる。

 これが箱根駅伝予選会となると地方大学はもっと厳しい戦いになる。チーム最大の目標となる全日本大学駅伝は8区間106.8㎞。1~6区は10~12㎞前後で、ロング区間の7区(17.6㎞)と8区(19.7㎞)も20㎞に満たない。当然、この距離に合わせてトレーニングを積むことになる。しかし、箱根駅伝予選会はハーフマラソン(21.0975㎞)で争われるため、距離への対応が難しくなるからだ。加えて、8人揃えればいい全日本大学駅伝とは異なり、箱根駅伝予選会は10~12人の選手が必要になる。

 昨年の箱根駅伝予選会で最下位通過となった国士大の平均タイムは1時間4分34秒。地方大学はハーフマラソンを走る機会が少ないとはいえ、このタイム以上の自己ベストを持つ選手は上田颯汰(関学大4)、守屋和希(関学大3)、アニーダ・サレー(第一工大4)の3人しかいない。ハーフマラソンの対応が急務になるだけでなく、地方大学の場合は指導者も箱根駅伝予選会の経験がない。また箱根駅伝予選会を勝ち抜くには、「集団走」などのテクニックも必要になってくる。

 そして一番ネックになるのが大会のスケジュールだ。箱根駅伝予選会は10月後半。全日本大学駅伝は毎年11月の第一日曜日に開催される。両レースの間隔は2~3週間しかなく、ハーフマラソンのダメージは小さくない。そのため箱根駅伝予選会に参戦すると、全日本大学駅伝にコンディションを合わせるのが難しくなるからだ。

 関東勢とは異なり、地方大学にとっては全日本大学駅伝がチーム最大の目標になる。本気で全日本を狙っている地方大学が、突破の可能性が高くない箱根駅伝予選会に出場するのはリスクが大きい。全国に門戸が開かれたといっても、全日本大学駅伝に出場できなかったチームが〝記念受験〟するような感覚で挑むことになるのではないだろうか。

 

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