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日本がW杯4度Vの格上ドイツを相手に2-1の歴史的な逆転勝利。勝ち点3を獲得した(写真・ロイター/アフロ)
日本がW杯4度Vの格上ドイツを相手に2-1の歴史的な逆転勝利。勝ち点3を獲得した(写真・ロイター/アフロ)

なぜドーハの歓喜が生まれたか…背景にあった浅野の「無視した」覚悟と堂安「ふざけるな!」の怒り

 圧倒された理由は、ドイツが講じてきた日本対策にあった。
 日本が2-0で快勝した9月のアメリカ代表戦と、同じ[4-2-3-1]システムで臨んでくるとドイツは読んでいた。その上で1トップの前田大然(25、セルティック)を両センターバックが、鎌田をダブルボランチがしっかりとケアする戦い方を講じてきた。
 これでは前田と鎌田が横並びになって仕掛けるプレスを繰り出せない。ファーストディフェンスが効かず、ボールの奪いどころも定まらないから2列目以降も後手を踏む。鎌田をして「後ろに人数がいるだけで、ただ余っている状態になった」と言わしめた展開が続いた。
 加えて、ドイツの巧さも日本を混乱させた。左サイドバックで先発し、W杯通算で出場12試合目と日本人選手で歴代最多に躍り出たDF長友佑都(36、FC東京)が振り返る。
「相手も巧かったし、特にミュラーのポジショニングが非常にいやらしかった。そこへムシアラが世界トップレベルにある個人技で突破を図ってきたので、そこの対応への難しさがありました」
 トップ下のトーマス・ミュラー(33)が変幻自在に左右に流れ、長友の対面でセルジュ・ニャブリ(27)と、右サイドバックの酒井宏樹(32、浦和レッズ)の対面ではジャマル・ムシアラ(19、すべてバイエルン)と数的優位を形成。そこへ左右のサイドバックも絡んでくる。
 縦へのスピードを武器にするMF伊東純也(29、スタッド・ランス)も低い位置に下がり、左サイドバックのダビド・ラウム(24、ライプツィヒ)の攻撃参加をケアせざるをえなかった。しかし、必死の守りも前半33分に破綻をきたしてしまった。
 伊東と酒井がともにゴール付近の選手をケアした結果、ペナルティーエリアの左側に入り込んできたラウムをフリーにしてしまう。慌ててGK権田修一(33、清水エスパルス)が飛び出すも、ボールを後ろ向きに持ち運ぼうとしたラウムを倒してPKを献上してしまった。
 これをギュンドアンが確実に決める。日本の戦い方がまったくハマらない展開を考えれば、この時点で対策を講じてもよかった。しかし、森保監督は動かない。ピッチ上でも長友やキャプテンのDF吉田麻也(34、シャルケ04)が「2点目は絶対にやらない」と大声を張りあげる。
 前半途中で形を変えなかったのは、大声援で指示が正確に伝わらないおそれがあり、その場合はさらに混乱とピンチを招きかねなかったからだ。アディショナルタイムに決められたと思われたFWカイ・ハフェルツ(23、チェルシー)のゴールが、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の介入でオフサイドとなって迎えたハーフタイム。森保監督が動いた。
 MF久保建英(21、レアル・ソシエダ)に代えてDF冨安健洋(24、アーセナル)を投入。中央に吉田、右に板倉、そして左に冨安を配した3バックの目的はしっかり守るだけではなかった。システムを[3-4-3]に変えることで、前線からの守備を機能させた。
 前田の背後に鎌田、伊東とシャドーを配置。マイボール時には前へ一列上がるラウムを除いた3人でビルドアップを図るドイツを前田、鎌田、伊東の同数でケアする。日本が戦い方を一変させた後半を、左ウイングバックに回った長友は効果てきめんだったと振り返る。
「相手の方がけっこうあたふたしていた。日本が戦術を変えたのがすべてでしたね」

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