• HOME
  • 記事
  • サッカー
  • メッシ率いるアルゼンチンの36年ぶりW杯優勝から日本代表が学ぶべき点はどこにあるのか…城彰二氏の分析
アルゼンチンのメッシが5大会目の出場となったW杯でついに頂点に立った(写真・新華社/アフロ)
アルゼンチンのメッシが5大会目の出場となったW杯でついに頂点に立った(写真・新華社/アフロ)

メッシ率いるアルゼンチンの36年ぶりW杯優勝から日本代表が学ぶべき点はどこにあるのか…城彰二氏の分析

 アルゼンチンは、W杯においてこの試合を含めて7試合で6勝1敗とPK戦に圧倒的な強さを誇る。強さの理由のひとつはGKエミリアーノ・マルティネスの能力の高さだろう。延長戦後半のアディショナルタイムで、1対1となる絶体絶命のピンチを足を延ばして止め、自信と勢いを持ったままPK戦に突入。2人目のコマンのゴール左を狙うキックを読み切ってストップし、3人目のチュアメニにはプレッシャーをかけて枠を外させた。オーラに溢れていた。
 そして、エースのメッシが1人目に蹴って成功。敗れたフランスも一人目にエムバペが決めた。エムバペは、この日、3本目のPK成功である。真似のできない精神力だ。PK戦の1人目のキッカーは流れを作る意味で非常に重要なポジションにある。日本はクロアチア戦では、その場での立候補制を採用。勇気を出して南野が1人目を買って出たが、結果失敗して、チームに勢いをもたらすことはできなかった。
 PK戦用のトレーニングを積み、その適性を見極めた上で、事前に順番は決めておくべきだろう。そして1人目はチームのエースと呼ばれるリーダーが蹴るべきだと思う。たとえ失敗しようが誰もが納得いく人物に任せるべきで、またやみくもに強いボールを蹴ろうとするのではなく、アルゼンチンのように冷静でテクニカルなキックを身につける必要もある。
 そして戦術的には両チームが見せた攻守の切り替えの速さを見習うべきだろう。アルゼンチンの2点目は、自陣からわずか5タッチでゴールまで運んだカウンター。フランスの後半の同点ゴールもメッシからコマンが高い位置でボールを奪ってから仕掛けたショートカウンター。攻守の切り替えの速さと、そのクオリティが非常に高く、ハイプレッシャーの中でもボールがおさまり、ワンタッチで崩せる、日本のレベルは、まだこの領域には届かない。
 加えて連携力。これまで「メッシ頼み」から抜けきれなかったアルゼンチンが、違ったのは、アルバレスやマルティネスらの若手や、ディ・マリアら個の能力の高い選手が出てきたことにより、メッシが彼らを生かし、周囲もメッシを生かす連携力がチームに加わったことにある。
 日本も連携力をさらに磨く必要がある。リアクションサッカーだけではベスト16の壁は破れない。守備に関しても、どこでどうボールを奪い、攻守を切り替えるのかという約束事を徹底し、組織力を高めねばならないだろう。その共有意識がなければ、アルゼンチンやフランスのように一気に前へボールを運ぶ推進力が生まれてこない。
 また日本も海外でプレーする選手が増え、三笘、鎌田、遠藤、堂安のようにワールドクラスで通用する個の能力を持った選手が出てきたが、この決勝戦を見る限り、その個の能力のレベルもまだ物足りない。

 

関連記事一覧