単独首位に立った広島の新井監督は先頭に立って声を出しチームを引っ張っている(写真・黒田史夫)
単独首位に立った広島の新井監督は先頭に立って声を出しチームを引っ張っている(写真・黒田史夫)

広島の単独首位は春の珍事か本物か

「新井はコーチ経験はないが、苦労に苦労を重ねて2000安打まで打った男。そういう彼の野球観が、今の指揮ぶりに滲み出ている。試行錯誤はしているのだろうが、すべてが勉強だという謙虚な姿勢で、常に前向きな姿勢を失わず、選手のモチベーションを何よりも大切にしているのがよくわかる。彼は、監督就任会見で、『猛練習という広島の伝統を大切にしたい』というような話をしていた。その考えは正しい。新井のように常に勉強を続け、根気と情熱を持って選手と向かい合える人間は、監督として成功する。彼の明るさと、素晴らしい人間性があったからこそ松田オーナーは監督に指名したのだろう」
 広岡氏が、広島の快進撃の理由のひとつとして見ているのが投手陣の奮闘だ。ここまでのチーム防御率の2.50はリーグ2位。昨年の最終的なチーム防御率は3.54でリーグ5位だったから大きく改善されている。
「戦力は決して整っているとは言えない。だが、ピッチャーが踏ん張りだしたのが大きい。力が落ちたかと心配していた大瀬良は、復活しているし、何しろ栗林につなぐまで人材不足だった中継ぎ陣が安定し始めているのが大きい。全体的にコントロールがよくなっている」
 先発は、大瀬良、床田、玉村、九里、遠藤の5人で回している。すでに全員に勝ちがつき、大瀬良は2勝だ。昨年オフに右肘を手術した森下も復帰し、2軍戦で投げるまでになっているため、今後は、もう1枚、強力な戦力が加わることになる。
 特筆すべきは、広岡氏が指摘するように課題とされていたブルペン陣の改善だろう。9回の栗林につなぐまでの7、8回が確定できていなかったが、2年目の左腕ターリー、同じくHonda鈴鹿からドラフト5位で入団して2年目で、昨季は50試合に登板している松本の2人、そして現役ドラフトで巨人から獲得した左腕の戸根らが、そのポジションで安定感を示している。松本、戸根は今なお防御率0.00だ。
 ターリーは、150キロ前後のストレートに速度差のあるナックルカーブを交える緩急、松本はウイニングショットのフォークを自在に操れるようになった。制球力の改善が目につく。またケムナ誠、アドゥワ誠、島内、黒原に大阪ガスからドラフト5位で獲得したルーキーの河野らもブルペンに控えていて、追う展開でも傷口を大きく広げない。最終的なチーム防御率が2点台で収まるかどうかはわからないが、チームのウイークポイントが解消に向かいつつはある。
 そして昨年のチーム打率が12球団トップの.257だった打線が勢いの源である。ヤクルトとの開幕第1戦、2戦と、連続完封負けを喫していた打線が、徐々に目覚め始めて、現在のチーム打率.236が3位、本塁打11が横浜DeNAと並び2位、得点42が3位となっている。開幕は8番でスタートした菊池を第2戦から1番で起用、3番の秋山、4番マクブルーム、5番西川、6番デビッドソン、7番坂倉は、ほぼ固定。2番と8番は調子などを見て変えているが、巨人と違い固定されているラインナップが好調の証だろう。

 

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