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サイヤング投手のバウアーが先発デビューの広島戦で白星。98球の圧巻ピッチングだった
サイヤング投手のバウアーが先発デビューの広島戦で白星。98球の圧巻ピッチングだった

「1か月遅れでも2桁勝つのでは?」横浜DeNA超大物バウアーの何がどう凄かったのか…7回1失点9奪三振勝利の広島戦での「ソードポーズ」封印の理由と異常なボール回転数

 横浜DeNAに入団したサイヤング賞投手のトレバー・バウアー(32)が3日、横浜スタジアムでの広島戦で先発デビュー、7回で98球を投げて毎回の9奪三振の7安打1失点の好投を見せて4-1のスコアで来日初勝利を手にした。日米を跨いで騒動となった「SWORD(ソード)セレブレーション」は“封印“したが、三浦大輔監督は「打者の反応を見て強弱をつけてゲームメイクした。引き出しの多さ、精度の高さを見せてくれた」と絶賛。視察したライバル球団のスコアラーからは「1か月遅れでも2桁勝つのではないか」という声が出るほど震撼させる内容で、メジャー5年連続2桁勝利の実力を誇示した。バウアーの何がどう凄かったのか?

 あえて高めを狙う直球と多彩な変化球

 

 サイヤング&最優秀防御率タイトルホルダーの看板に偽りはなかった。
「間違いなく本物だった。1か月遅れのペナント参戦となったが、簡単に2桁勝つんじゃないか」
 ネット裏から引き揚げてきたスコアラーの1人が真剣な顔でこうつぶやいた。
 毎回の9奪三振で7回1失点。圧巻の98球だった。
 その唯一の失点も2回二死からレッズ時代の元同僚のデビッドソンにあえて意識して狙って投げた高めの152キロのストレートをレフトスタンド中段まで運ばれたもの。バウアーは、デビッドソンが次の打席に入る前に「なんてことしてくれたんだ」と声をかけたという。
「オレも調子が良くない。打率は.180しか打っていない」と、この時点で打率.171だったデビッドソンが言い訳したそうだが「180mは飛んだんじゃないか」とジョークで返した。4回に巡ってきた第2打席では、再度ストレートで勝負して空振りの三振に打ち取っている。負けん気は強い。
 1、2回は、最速155キロのストレートとカットボールで組み立てていたが、打順がふたまわりに入る3回からは、変化球主体のピッチングに切り替えた。ナックルカーブ、スライダー、そして新球のスプリットチェンジが冴えた。5回一死二塁で野間を迎えたピンチではナックルカーブを選択して見送りの三振に斬って取っている。
「後半は変化球でというのが伊藤との共通認識だった。カーブは左バッターに要所で自信のあるボールになった」
 ハマスタ史上最多となる3万3202人で埋まったファンの歓声が一段と高まったのは、5回一死一塁のバウアーの打席だ。
 初球はファウルになったが、ファームで“職人”藤田一也から伝授されたバントをしっかりと一塁側へ決めて見せたのだ。
「彼は本当に素晴らしいコーチだったので楽な気持ちでバントを決めることができた」
 このバントが楠本の勝ち越しタイムリーにつながる。
 メジャーで5年連続2桁勝利を挙げているバウアーは勝ち方を知っている。リードをもらった後の3番の秋山から始まる重要な6回を3人でピシャリ。5番の坂倉を外から入れるナックルカーブで見逃しの三振に打ち取り、自らを鼓舞するかのうように手を叩いた。この回の3人締めと、その裏の2点の追加点は無縁ではないだろう。
 球数が100球に近づいてきた7回二死から韮沢、代打の堂林に長短打を浴びて、二、三塁のピンチを背負ったが、代打の松山に対してスプリットチェンジを連投して、最後も、その新魔球が鋭く落ちて空振りの三振。登板前にひと悶着あった刀を鞘に納めるようなポーズを取ってもおかしくないシチュエーションだったが、バウアーは、それを封印。右手でガッツポーズを作って雄叫びを挙げた。
 結局、バウアーは「ソードセレブレーション」を一度も行わなかった。
「いつもやるわけじゃない。やるような条件の三振がなかった」
 そう説明したが、きっと登板前に起きた騒動が踏みとどまらせたのだろう。球団はスタジアムを盛り上げる映像演出を用意。公式サイトでファンに「一緒にソードセレブレーションを」と呼びかけたことを投手キャプテンの山崎が「公式が煽るな。アホちん。ノーリスペクト」とSNSで批判。山崎は、何もパフォーマンスや、バウアーを批判したわけではなく、それを焚きつけた営業サイドのコミュニケーション不足を指摘したものだが、一部の海外メディアで、誤解されて伝わり、ファンの間では、「やっていいのか悪いのか」と戸惑いと動揺が広がった。その後、山崎がバウアーに事情を説明して握手。球団とも話し合いを持ち、この日、公式サイトが声明を出すに至って一件落着となったが、本人はまずデビュー戦だけに集中しようと考えたのかもしれない。賢明な判断だったと思う。

 

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